第1章 その7
「……
「誰に聞いたと思う?」
──魔法剣とは武器に属性魔法を
習得すると、
私の目標──
第八階位に
だけど、その
……誰も知らない……エルミアにだって、まだ話してはいないのにっ!
黒髪の青年が私を評する。
「君は少し
「っ……! なら、どうすればいいって言うのよ!」
「その助言が
「…………」
そういう気持ちがなかった、とは言わない。
けど……剣をひき
「
青年は
「
「……
「冗談のつもりはないよ。君には
何のてらいもなくそう話す青年。本気みたいだ。
……ほんと、何者なのだろう、こいつは。
どうして、会ったばかりの私をここまで評価してくれるのだろう。
両親も、親族も、血の
私は、ずっと、ずっと、ずっと一人で……これから先も、一人で……強くならないといけないのに。
青年はテーブルに両
「ま、そう深刻に考えなくてもいいよ。
「サクラ? ハナとルナ?? ……エルミアの推薦???」
私は思わず言葉を
『サクラ』『ハナ』『ルナ』。
この名前……確か冒険者ギルドの報告書で読んだ……まさか、ね。
私は立ったまま珈琲カップを手に取ろうとし──青年が新しく淹れ直してくれた。
一口飲み、おずおずと
「……『サクラ』って、【盟約の桜花】の団長さんじゃない?」
「ん? 知ってるのかい?」
「……じ、じゃあ『ハナ』って、
「そうだね。数ヶ月前、迷都へ行ったら副長のタチアナも
「……………」
意識が遠くなる。
三人共も現冒険者の頂点とも言える
そんな人達の師であり、関係者!? この青年が!?
残っていたショートケーキを
ここまで来たら、最後の一人についても聞かないといけない。
「…………『ルナ』って【
いや、まさか、ね。
けれど、青年はカップと皿を重ねつつ、あっさりと頷いた。
「そうだよ。今じゃ僕よりも
──【天魔士】
それは、魔法士の頂点にして至高の存在だ。いうなれば……大陸最強後衛の
もう、訳が分からない。
そうこうしている内に、
「さて、腹ごなしに
……落ち着いて、落ち着くのよ、レベッカ。
この男が何者かは分からないけど、取っ掛かりが欲しいのは事実だし、コツだけ聞き出してみて、それが有効なら
エルミアも、私を気にかけてくれてたみたいだし。……推薦って何よ。事前に言ってくれてもいいのに。
心中で
すると、青年は
「……何のつもり?」
「全力で攻撃してきてくれていいよ。ああ、花達が
「へぇ……
──風が
「行くわよっ!!!!!」
私は
そして、地面すれすれから、逆
普通なら、この一撃で
──が、
「!?!!」「おっと、危ない」
私の斬撃はあっさりと青年に
それでも、
激しい金属音。
愛剣が悲鳴を上げ、いつの間にか、
青年は左手で眼鏡を直しながら、賞賛してくる。
「
「くっ!!!」
これは模擬戦だ──という考えがなくなり、至近距離で
が──駄目。
「思ったよりもずっと練り上げられている。レベッカは
「舐めない、でっ!!!!!!」
叫びつつ後退し、剣を真正面に構える。
……この男、私よりも遥かに強い。おそらく、私の父よりも。
でも、私は負けられないっ! 負けられないっ!!
地面を強く強く
私の愛剣をペーパーナイフがあっさりと
「ん~? 普通の連続突きだとつまらない。
「これでっ!!!!!!」
青年の
これは──
──次の
……嘘、でしょ……?
青年が
「今の一撃は良かったよ。君の
「………………」
私は少し離れ
地面に
この剣は、私を支えてくれた
さっきまで
「あ~……そ、その、ち、
「ぐすっ……わたし、子猫なんか、じゃ、ない……」
涙を
明らかに
自然と──身体が動いた。
「わたしは、あんたなんかに、負けないんだからぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
私は半ばから折れた剣を最上段から振り下ろす!
「おおっとっ!?」
私が繰り出した
眼鏡の奥の瞳が
「エルミアが気に入るわけだね。初めての模擬戦で両手を使わされたのも久しぶりだ。今日はここまでにしておこうか」
「……………」
私はゆっくりと剣をひき、鞘へ収めた。
……本当に折れちゃったんだ。私の剣……。
心が
青年は突き刺さっている剣身とペーパーナイフを
「ごめんよ。剣を折るつもりはなかったんだけど……君が思ったよりも強くてね」
「! ……本当、に?」
黒髪の青年と視線を合わせる。
すると、強い
「強いよ。第八階位というのは信じられない」
「……そ、そう」
沈んでいた心が
──頭の上に、大きな白いタオルが降ってきた。
「顔を洗うついでに、お
「え? で、でも……私……」
「折ってしまった剣のお
青年が私を見つめる。そこにあるのは
……エルミアと同じ。
私は
「…………分かったわ。それと、その──……ハ、ハル」
「ん? 何だい?」
私は黒髪の青年へ向き直り、深々と頭を下げる。
「え、えっと……あ、
青年が、くすり、と笑った。
「任されたよ。【辺境都市の育成者】の名に
「? 何??」
青年──ハルは私へ笑いかけた。
「
「!?!!」
え、えっと……き、綺麗って……あの、その……。
すると、ハルは
──石造りのお風呂は今まで私が入ってきた中で、一番広く気持ちよいものだった。
どうやら温泉らしい。あと、洗髪剤は花の
【
お風呂上がりの牛乳も冷えていて
こういうのも
しかも、
何と、あの白髪ハーフエルフ、この廃教会で
ふふふ……良い情報を得たわ……。
だけど、当面、ハルのことはジゼルに
──そんなことを思いながら、私は数年ぶりに安らかな
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試し読みは以上です。
続きは2020年7月17日(金)発売
『辺境都市の育成者 始まりの雷姫』
でお楽しみください!
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辺境都市の育成者 七野りく/ファンタジア文庫 @fantasia
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