4
「ちょっとーどこまで行くのよ」
私たちは公園の坂道を歩いていた。私の前を今田が七歩くらい前を歩いていた。見兼ねた今田が尾張の暗い表情を見て呆れた顔で言い放った。
「そんな暗い顔すんな」
「だって…」
私は今までやってきたこと、過ごしてきた時間に後悔していた。なかなか目を合わせない今田が私の言い訳に答える。
「そっか、だったらずっとそこにいろ、俺は先に進むからな」
私は坂道の頂上を見た。すると見慣れた顔がこちらを見ていた。
「ハンちゃん!」
「はるか!帰ってきたぞ!」
もう会えないと思っていた半間という男が坂道の頂上で待っていた。今いる地獄から助けてくれるような気がした。そして、もう一つ。方向性の違いで別れた今田と半間が並んでいる。まさに待ち望んでいた光景であった。そして、今田が一言。
「尾張―!どうするー?俺たちはまたバンドするけど」
私はとても嬉しかった。そして、ようやく自分に嘘をつかず、心からしたいことを見つけることが出来た。
「…やるに決まってるじゃない、バーカ」
「じゃあ、決まりだな」
私は三人でよくやっていたポーズをした。手を握り、親指を立て、腕を上げる、そしてその手を今田に向けた。それに続くようにして三人は同じポーズを取った。ポーズの後、私が坂を上り、今田と半間が坂を下る。そして、三人は一緒に坂を上っていった。私たちはあの日と同じように原っぱで座りながら、曲を作るのであった。おわりになるのはいつか分からないが。
終
おわりに 名鳥 佑飛 @torini_no
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます