本編より切ない!ゼキ亡き後、ムギと出会うまで

 ゼキ亡き後、村長は正式に王位継承1位になります。


 先王が存命のうちに、村長に行政権を任せ色々教えようということだったのでしょう。


 しかし、村長はもともとは王位継承順位101位。みんな、言うことを聞いてくれません。しかも、村長を引きずり落そうという派閥も多くあります。


 王族の仲が悪いのは昔からですが、村長は101位だったため、王位継承権争いなどに巻き込まれたことがなく、健やかに育ちました。なので人の悪意という衝撃は大きいものでした。


 先王でさえ王族をまとめることができません。でも、先王は、とてもいい人です。村長にいろんなことを教えてくれます。尊敬できる人です。


 でも、協力的で優しいのは先王のみ。他はもう本当にひどい。村長は四面楚歌。


 村長はようやく、ゼキの立場やゼキに対してどれだけ自分が安易な態度をとってしまったかを知ります。それをゼキに悟られていたことも。


 今の自分より若かったゼキが、帝国の暴走や、病気、死、そして自分に会いたい気持ち、すべてを抱え一人でこらえていたと思うと、涙があふれてきます。

 支えるどころか、寄り添うこともできなかったことに。


 でも、だからこそ、頑張ろうと思います。

 ゼキが今の自分を知ったら、笑われちゃうと思って……。


 ゼキの宝物だった雑草押し花は、今では村長の宝物です。辛いときに眺めては心を落ち着けます。辛くなくても、時折眺めます。


 しかし、村長はずっと疑問でした。確かに自分は、そこそこ出来はいい(村長は天真爛漫なのでその辺も普通に自覚あり)、

 でも、だからといって101位から1位になる程ではない。


 先王に尋ねてみると「優秀だから」「不遇だったドリル隊長を救った優しい子だから」といいます。そう言われても、やはり100人抜きは、どうもおかしい。


 帝国と王国の関係がいよいよ悪化した時、先王は王国に伝わる、精霊のこと、精霊を使うことでの代償を村長に伝えます。


 村長は、王国が遠い血筋の者でも王族として囲う必要がある意味を知ります。

 そして、王位には程遠い自分が王位に就くことの意味も。


 村長は悩みます。そして大切なことを今まで話さなかった先王への不信感も増します。村長はどんどん、痩せていきます。ペット(村長のお供の精霊)がとても心配しますが、ペットには笑顔しかみせません。ペットもやがて村長の負わされた使命を知ります。


 ペットは村長がとても大切です。ゼキにも、自分亡き後の村長のことを頼まれました。ペットは村長を王国から逃がしてしまおうと考えます。


 でも、村長は「逃げよう」と言って、「はい」というような人物では、ないことをペットは知っています。


 そこで、ペットはオミソ村の選挙の情報を手に入れます。少しだけ、王国を離れて行ってみようと村長に提案します。


 村長は血筋だの、王族だの、そういったことに疲れ果てていたので、「選挙制」という発想を持つ賢人!?に会いたいと思います。その賢人!?に今の立場を相談すれば、この状況を脱することができるかもしれないと!

 藁をもすがるつもりで、オミソ村へ旅立ちます。


 そこにいたのは、賢人でもなんでもなく、ただの16歳の少年です。しかも、やさぐれてるし、めちゃくちゃ態度が悪い。

 でも、この少年といると、とても楽しい。愛想がなく、ぶっきらぼうな少年は、子供の頃のゼキにそっくりだったから。


 この少年は、人の心をくみ取ろうと必死になります。自分が辛い思いをした分、相手を分かってあげたいと必死になります。

 ゼキもそのような人でした。でも自分はゼキにしてあげられなかった。

 目の前の少年が、自分ができなかったことをしています。だんだん、村長は自分自身を取り戻していきます。

 

 この少年やゼキの優しさを引っ張りだしたのは、村長自身であることが、村長はあまり分かっていませんが。


 そして、ドリルさんが村長を迎えに来た時には、村長は、もうすべての覚悟は決めています。王族をまとめきれなくても、精霊の代償が自分の命でも……。


 村長は王国に戻るのでした。ゼキのように、少年のように人を救うためにと、思って。

 



 

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本編より面白くて、読みやすい!短編集! おしゃもじ @oshamoji

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