第9話
七雲は手我波子と分かれた後、とりあえず家路についた。
途中、既にリングタイプへと姿を変えたベルクに言葉をかけた。
「相棒・・・」
「どうした七雲、わしに何か言いたそうだな」
七雲は質問を投げかけようとしたが、はたして聞いてしまっていいのか判断がつかなかった。
誰しも踏み込んではいけない領域というものがある。
しかし意を決して七雲はベルクに聞いた。
「ああ、聞いておきたいことがあってな」
「なんじゃ、改まって、お主らしくもない」
「今日お前は何発撃った?」
「いつも通り6発だったはずだが」
「確かにそう6発だ、敵が3人でそれぞれ短剣が2本ずつ、合計6発が必要だった。だがお前がいつも言っている流儀やたしなみとやらはどこへいったんだ。1年前は、るーもいたし、幸運もあった、しかし幾度となく死線をくぐりぬけてきた中で、お前がルールを曲げたことは一度もなかったはずだ。それがどうして今日はあんなにも簡単に」
「波子姉さんが恐ろしかったから、というのでは納得せんか」
いつものベルクなら茶化してはぐらかすところだが、今回はそれは無理と判断したのか、いつになく真剣な口調だった。
「お前、本当は一体何発撃つことが出来るんだ?」
「藤堂正太郎は実験は最終段階と言っていた。おそらく明日は今までのようにはいかないだろう。実験体とやらもあんな短剣野郎だけとは限らない」
「俺には、るーを守る必要がある。だから教えてくれ!俺に何が出来るかを」
ベルクは七雲の覚悟を感じてこちらも真実を語る覚悟を決めた。
「まず、6発が限界というのは本当じゃ。今日は波子姉さんの手前余裕がなかったのもな。弾丸はお主の生体エネルギーを使用して作成される。そのエネルギーは6発分しかない」
ベルクはここで一度話を止め、次の本題に入る前に一呼吸置いた。
「しかしそれ以上撃つことは可能だ。お主の生命エネルギーを使用すればな」
「何が違うんだ」
七雲はそれだけ言うとベルクの答えを待った。
「簡単に言うと使用するのが、生体エネルギーはただの体力だが、生命エネルギーは文字通りお主の命、つまり寿命じゃな」
「もっとも儂は死神ではないからのう、お主の寿命が見えるわけではないし、寿命そのものが減るというよりかは体のどこかにダメージを負うイメージが近いか。それも肉体を蝕むのかそれとも精神を蝕むのか、正直儂にもわからんのでな、それで伏せておったのだ。隠していたのは謝るが、事情が事情ゆえ許されよ、七雲」
「相棒・・・よく話してくれた、ありがとよ。おかげですっきりできた。命を使うか・・・まぁ現状俺の人生なんて生きてるんだか死んでるんだか分かったもんじゃないしな。明日は命をかける意味は十分ある。いざとなったら撃ちまくればいいさ」
「七雲、少々なげやりだぞ、それに己を死人と言うか。情けないのう、それでは嬢ちゃんが嘆いていたのも無理もない、しっかりせんか。」
「いやっ、すまんすまん。まぁでも現実社会なんてそんなもんなんだって、俺なんて目的もなく生きるために生きているだけし、ひょっとしたらそう、おれはきっとあの日から死に場所を探しているんだよ」
七雲は勝手に自分を納得させる理由を探し出して吐き捨てるように言った。
「お主、本当にそう思っているのか、悪いが勝手に死ぬと決めつけるのは間違っておるぞ。人間そう簡単に死ねれば苦労はせんわ。まぁよいわ、まさかこういう話がお主と出来るとは思わなんだ。今宵は儂にとってなによりの馳走だ。明日はよろしく頼むぞ、相棒」
ベルクは愉快げにそう告げた
「サンキュー、相棒」
七雲も短くそれに答えたが、意識を閉じてしまったのかもうベルクからの返答はなくそれがその日の最後の会話となった。
らりるれろ ゆーま @yuma1013
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