第2話(完)

 数ヶ月後の年末。

 私はまた地元へと帰省した。

 実家近くの道端でおばあちゃんと遭遇し、言葉を交わす。

「おばあちゃん、お久しぶりです」

「久しぶりだねぇ。元気そうでなにより」

「おばあちゃんも元気そうですね」

 とくにこれといって話し込むわけではないけれど、少しだけ気持ちが和む。

 多少ボケていようが、おばあちゃんはまだまだ元気だ。


 そのとき、家から母親が出てきた。

「なにか声がすると思って。帰ってたの」

「うん、ただいま。隣のおばあちゃんが……」

 そう振り返った先には、もうおばあちゃんはいない。

「そういえばあんたには言ってなかったけどね。隣の家のおばあちゃん、1ヶ月ほど前に亡くなったのよ」

「え……」

「お盆の前から少しおかしかったけど。あれも、ボケじゃなくてなにか見えていたのかもしれないね」

「なにかって……」

「ほら、死期が近づくと見えなくていいものが見えるとか言うじゃない?」

 ため息を吐く母に対し、私はただ身体を硬直させる。


 さきほど、私は見えなくていいものを見てしまったのかもしれない。

 言葉も交わしてしまっている。

 つまりは、私の行く末を暗示していた――

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未来を暗示する者 りっと @litto

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