10 finale(フィナーレ)

 このまま、無駄死むだじにするわけにはいかない。せめてもの相討あいうちをねらってサブマシンガンの銃口じゅうこうてきに……。

 むねけるような衝撃しょうげきてきたまわたし心臓しんぞうつらぬいたのだろう。

 秋人あきひと心臓しんぞう射抜いぬかれていた。一流いちりゅう暗殺者あんさつしゃたちだ。ねらいははずさない。

 こんなときに、暗殺者あんさつしゃ養成ようせい機関きかんでの座学ざがく講習こうしゅう内容ないようかんできた。


 ――人間にんげん心停止後しんていしご最大さいだいで30びょう程度ていど行動こうどうできることがある。ころしたはずのてきころされるな――


 のう酸素さんそのこっているうちは、かんが行動こうどうできるケースがある。

 わたしさら数発すうはつ着弾ちゃくだんかんじながら、がねいた。

 ゆきうえたおむ。その衝撃しょうげきかんじない。

 くらい、くらい……。

 あきひ……と……。


















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 様々さまざまなことをかんがえながらも、秋人あきひと瑠奈るな様子ようす見守みまもっていると。

わかれの挨拶あいさつつづきは、ヘリのなかおこなってもらう。はやくヘリにんでくれたまえ。伝説でんせつのスナイパー、ミスターアキヒト」

 ひとりのおとこ秋人あきひとに、そうこえけた。

「おいっ! どういうことだ? 瑠奈るなつまもとかえしてくれる約束やくそくだったじゃないか?」

くちかたけたまえ! このわたしだれだとおもっている? われこそは宇宙うちゅう最強さいきょうころ時尾翔ときお かける。このたび、組織そしきたばねていくことになったしんリーダーなのだよ? これまでの組織そしきのやりかたではなまぬるい。これからはわたしのやりかたで3ねん。3ねん世界せかい掌中しょうちゅうおさめてみせよう」

 あれが宇宙うちゅう最強さいきょう魔女まじょ天城辰子あまじょう たつこちゃんをほうむったというタイムトラベラーの時尾翔ときお かける相当そうとう自信家じしんかのようだ。

「くっ! 瑠奈るな暗殺者あんさつしゃにするつもりか?」

「いいや。おんなころにするつもりはない。おんなわたし優秀ゆうしゅう遺伝子いでんしやしてくれるだけでいのだ。きみむすめさんは、あと7〜8ねんそだてないとならないが、きみおくさんにはさっそくわたしんでもらうことになる。なーに、きみからおくさんをげようというわけではない。ただ、わたしんでくれるだけでいんだよ。きみおくさんは私好わたしごのみの美女びじょだから、たのしみだ♪ もし、きみNTR寝盗られ属性があるのなら、きみまえおくさんをいてやってもいのだが、どうする?」

 なに? あのおとこ? 寝言ねごとってんじゃないわよっ! 女狂おんなぐるいのハーレム脳野郎のうやろう世界せかい征服せいふくなんてできるわけがないじゃない? 

 っていうか、7〜8年後ねんご瑠奈るなをどうするつもり? このロリペド野郎やろうっ!!

 とはいっても、当面とうめんはコイツが組織そしきのトップなのであればしたがうしかないのであろうか。

 秋人がいながら、べつおとこかれる? それは、かんがえていたのとは別方向べつほうこう地獄じごくである。

「かつての組織そしきあく秘密結社ひみつけっしゃだったが、あくにはあくなりの理想りそうがあった。だが、おまえは、組織そしき私欲しよくのために利用りようしようとしている。おまえゆるせん!」

「くっくっく♪ きみ宇宙うちゅう最強さいきょうころ楯突たてつこうとしているのだよ? 面白おもしろい。せっかくきみには華々はなばなしい仕事しごとあたえて、組織そしき復帰ふっきかざってもらおうとおもっていたのだが、わった。最強さいきょうスナイパーのまえで、美人妻びじんづま寝盗ねとる。最高さいこう興奮こうふんするじゃないか? ミスターアキヒトの身柄みがら拘束こうそくしろ。無傷むきずでな!」

 このこえ合図あいずまわりのおとこたちが秋人あきひとかこむ。そのかずにん

 ひとりひとりが、素手すでひと瞬殺しゅんさつする技能ぎのうけた手練てだれだ。

わるいがおれは、無傷むきずで5にんたおすなどできそうにない。怪我けがさせても文句もんくわないでもらいたいな」

「くっくっく。できるものなら……!?」

 時尾翔ときお かけるわるまえに、5にんゆきうえたおれていた。なにこったのか、まったくえなかったが、理解りかいはできた。

「なんだと!? おい、うごくな! むすめいのちが……」

 瑠奈るな拳銃けんじゅう銃口じゅうこうきつけようとした時尾翔ときお かける手首てくび秋人あきひとつかんでいた。

おそいぜ、宇宙うちゅう最強さいきょうなかかわずさんよぉ!」

 と、その瞬間しゅんかん時尾翔ときお かける姿すがたえる。タイムトラベル能力のうりょくだ。しかし。

無駄むだだぜ。『愛ⅰあいアイアイランド』っ!」

 過去かこあるいは未来みらいにタイムトラベルしたはずの時尾翔ときお かける姿すがたあらわれた。

 秋人あきひと姿すがた時尾翔ときお かけるかお蒼白そうはくとなっていた。無理むりもない。タイムトラベルした相手あいてもと時空じくうもどすなどいたこともない。

 秋人あきひと使つかっているのは、組織内そしきない魔法まほう超能力ちょうのうりょく常識じょうしき超越ちょうえつした桁外けたはずれの魔法まほう――量子りょうし重力じゅうりょく魔法まほう――なのだ。

 重力じゅうりょく時空じくうつらぬき、異次元いじげんまでも効力こうりょくおよぼす。最先端さいせんたん理論りろん物理学ぶつりがく超弦ちょうげん理論りろんによる推測すいそくだ。そして、わたしたち量子りょうし重力じゅうりょく魔法まほう使つかにとっては真実しんじつでもある。

 と、ここで周囲しゅういからおとこたちが、秋人あきひとたちのほうしのってくるのにいた。にしたじゅう秋人あきひとけられる。

秋人あきひとあぶないっ!」

 わたしさけぶのとほぼ同時どうじに、ひとりのじゅういた。

 が、何事なにごとこらない……。

 時尾翔ときお かけるが、一瞬いっしゅんすきをついて、秋人あきひとから距離きょりる。

 距離きょりめてきていた周囲しゅういおとこたちが一斉いっせい秋人あきひとじゅうける。

秋人あきひとーっ!」

 はちにされる秋人あきひと……のはずが、やっぱり何事なにごともない様子ようす秋人あきひと自身じしんおどろいているところから、かれ能力のうりょくではなさそうだ。

 と、秋人あきひと周囲しゅういゆきくろずんでいく。

 銃弾じゅうだんだ。着弾マッシュルーミングした銃弾じゅうだんが、ゆきうえらかされているのだ。

「おたせ〜♡ きみたちはさきにおうちかえってていよ? あとわたしが、キツーいおきゅうえておくからね☆」

 このこえは。

辰子たつこちゃん!」

 天城辰子あまじょう たつこちゃんは、わたしほうもせずにてきほうへとかっていく。

「なんとか間一髪かんいっぱつってくれたようだな?」

秋人あきひと!」

 いつのにかそば秋人あきひとがいて、瑠奈るないている。

辰子たつこちゃん、手助てだすけしなくて大丈夫だいじょうぶかしら?」

手助てだすけ? 宇宙うちゅう最強さいきょう魔女様まじょさまそばおれたちがいても足手あしでまといになるだけだろ?」

「それもそうね♪」

 辰子たつこちゃんにけて発射はっしゃされるたまは、すべ辰子たつこちゃんの足元あしもとへとちていく。

 まるで空気くうきかべたってエネルギーを使つかたし、そのまま地面じめんへと落下らっかしているかのように。

 辰子たつこちゃんがあるきながら、右腕みぎうでばして、ヘリコプターを指差ゆびさす。

反撃はんげきいっくよお〜っ!」

 その瞬間しゅんかんにヘリコプターが姿すがたした。

「は〜い、重力じゅうりょく崩壊ほうかいしたいひとー、げてね〜♪ あれー、いないのー? じゃあ、降参こうさんってひとはげてー。全員ぜんいんかー。たすかるな〜。まあ、降参こうさんしたってゆるさないけれどね。にやり★」

 辰子たつこちゃんがそううと、視界しかいらぎはじめた。

 まともにっていられなくなり、秋人あきひとほうへとせる。

 さら視界しかいらぎはおおきくなり、わたしたちは……。


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 くと、わたし秋人あきひと瑠奈るなの3にんいえ玄関げんかんまえにいた。

 そして、いえ周囲しゅういにはゆきうえたおれているおとこたちの姿すがたがあった。なかでも、約一名やくいちめい異彩いさいはな人物じんぶつが。

 ゆきうえ全裸ぜんら仰向あおむけにたおれているそのおとこ時尾翔ときお かけるであった。

「あら、ずいぶんとちいさい……」

 わたしがふと感想かんそうらしたところで、玄関げんかんのドアがひらいて辰子たつこちゃんがかおのぞかせた。

はやはいってきなよ」


 わたし瑠奈るなかしつけて、もどってくる。

 辰子たつこちゃんはどらきをほおばりながら、熱弁ねつべんをふるっていた。

「でね、『いたいのはやだ』ってうから、ちんちんとたまたまをどもサイズにしてやったの」

「えげつないわね〜」

 辰子たつこちゃんのミルクティーのおかわりを用意よういしてもどってきたわたしあいづちをれる。

 と。

「きゃっ!」

 足元あしもとにいたうりぼうにつまずいて、おぼんうえのミルクティーが落下らっか……しかけたものの、逆再生ぎゃくさいせい画像がぞうのようにティーカップはおぼんうえもどり、うりぼうにけつまずくまえ状態じょうたいまでさかのぼる。

 その様子ようすていたのは、最初さいしょからここで辰子たつこちゃんのはなしいていたわたし……。なんでわたしがこんなにたくさんいるの?


「じゃあ、わたしかえるから。グラビぶたちゃんをよろしくね♡」

 天城辰子あまじょう たつこちゃんは、うりぼうのグラビぶたちゃんをいてかえってしまった。

 グラビぶたちゃんは、もしものときのためのわたしたちの護衛ごえいねたペットだ。

 は、まんまうりぼうでこれ以上いじょう成長せいちょうしないらしい。

 けれども、総火力そうかりょく地球ちきゅう存在そんざいするすべての核兵器かくへいき一億倍いちおくばい以上いじょうなんだとか。

 『その火力かりょくって、地球ちきゅう大丈夫だいじょうぶなの?』とおもったけれど、その程度ていどでどうこうなるほど地球ちきゅうという惑星わくせいではないらしい。

 恐竜きょうりゅう絶滅ぜつめつこしたという小惑星しょうわくせいチクシュルーブの衝突時しょうとつじのエネルギーは広島型ひろしまがた原子げんし爆弾ばくだんやく10億倍おくばいわれている。

 その小惑星しょうわくせい地球ちきゅうのこした傷跡きずあとは、わず直径ちょっけいやく160キロメートルのクレーターにすぎない。

 おなおおきさの小惑星しょうわくせいが、もう一度いちど地球ちきゅう衝突しょうとつすれば、人類じんるいはおそらく滅亡めつぼうするものとおもわれるが、地球ちきゅうという惑星わくせいにはささやかなクレーターがしょうじるにすぎない。

 などと秋人あきひとから説明せつめいけたが、さして興味きょうみもない。

 今回こんかいのような事態じたいさえきなければいのである。

 そういえば、時尾翔ときお かけるがご近所きんじょさんとなってしまった。

 かれは、辰子たつこちゃんいわく、『30ねんつか、きみのことをしんあいしてくれるひと結婚けっこんしたら、のろいがける』ということで、およめさんさがしに必死ひっしである。

 まあ、自業自得じごうじとくとはいえ、あわれではある。

 せいぜい、ひとつけてもらいたいものた。

 ちなみに、もともどったあと浮気うわきしたら、『ちんこがもげる』らしい★


 結局けっきょく南極なんきょく今回こんかいけんによって、わたし秋人あきひとには量子りょうし重力じゅうりょく魔法まほうそなわり、あたらしいペットが家族かぞくになった。

 名前なまえは、瑠奈るな命名めいめいで『グラたん』となった。

 そしていまわたしたちは、あのうみていた。幼少時ようしょうじなつ、そして秋人あきひとはじめてむすばれたおも場所ばしょ

 あの海中かいちゅうからの太陽たいようのきらりを、是非ぜひとも瑠奈るなにもせてあげたかったのだ。

 秋人あきひと瑠奈るなは、グラたんの魔法まほうしたまで移動いどう秋人あきひとのへたれ!

「お〜い、美冬みふゆ〜っ! はやめよ〜。怖気おじけづいたんなら、グラたんにろしてもらうか〜?」

 したから秋人あきひとこえけてくる。

 そりゃ〜、わたしだってこのたかさはこわいけれど、ここは気合きあいでむわ。

 かる助走じょそうをつけて、わたしちゅうった。


 おしまい

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雪を溶く熱――ルートマイナスエックスな彼と量子的な彼女―― 魔女っ子★ゆきちゃん @majokkoyukichan

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