エピローグ、幸せな日々


 翌日、登校すると猪苗代と福男が、俺に手を振ってきた。


「おはよー」


「おはよーでござる」


 席に座るやいなや、猪苗代と福男は、俺をニヤニヤと見下ろしながら言った。


「それで、どうだったの?」


「……別に」


「何よー。せっかくお膳立てしてやったのに。可愛げのない」


 ぷくぅと頬を膨らませる猪苗代を、福男がそっとなだめるように言った。


「いえいえ。マリー殿、これはテツ殿が照れている時の顔でござるよ」


「おっ……つまり?」


「答えは言わずものがな、でござる」


「へへぇ」


 楽しそうにはしゃぐ二人から、視線を外して、時計を見る。授業開始まではまだ時間がある。

 

 春姫はまだ登校してきていない。


「ねぇ、ちゅーはしたの? ちゅーは?」


「手は握ったでござるか?」


 全くもってお節介だ。

 けれど、この二人がいなかったら、俺と春姫の仲がここまで深まることはなかった。


 そう考えると、少しは感謝した方が良いのは確かだった。俺は視線を上げて、二人に言った。


「今度、また四人でまたどっか行こう」


「良いね! 富士山登ろう!」


「それは嫌だ」


「テツ殿から誘うとは意外でござるなぁ」


「そうか?」


「そうでござる。なんだか、楽しげでござるよ」


 ……確かに、福男の言う通り、以前の自分だったら絶対に言わない言葉ではある。こんなに気持ちが浮ついているのは、初めてだ。


 まぁ、それもそうかもしれない。

 教室のドアを開く音が聞こえる。夏の気だるさを吹き飛ばす声が、すぐ近くで聞こえる。


「テッちゃん、おはよう!」


 だって、こんなに可愛い彼女がいるんだから……楽しいに決まっている。













〜おしまい〜

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幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。 スタジオ.T @toto_nko

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