第4話
三
マンハッタン、喫茶店”リチャーズ”。
「日本じゃもっと強いデストラクターが暴れてるみたい。何でも人間が入ってるから通常の戦力じゃ倒せないんだって」
窓際の、一番奥の席に集まる一行。ミュールとアシュガル、そしてジュピウスとユノの四人だ。
ミュールが持つスマートフォンに映し出されている動画はいつぞやの、ナイトキャリバーンとキュウセイオーが二機がかりでようやく倒せたデストラクターのものであった。
それを見る為、ミュールの後ろには残る三人全員が集結し、ぎゅうぎゅうと押し競饅頭している。それを鬱陶しそうにしながらミュールは告げた。
するとジュピウスの手が伸びて、その指先が動画内に移る騎士甲冑のような姿をしたロボット、ナイトキャリバーンを指差して言う。
「そのナイトキャリバーンの持つ力のみがデストラクターに取り込まれた人間を救い出せるとか」
「そのようです。M.I.B.からの資料に記載がありました」
「今のところ獣型のデストラクターしか現れていないから良いものの、こちらにも同じタイプが出現した場合、対処に難儀しそうだ」
ユノとの会話の後、彼女を連れてミュールたちの向かいの席へと戻りながら溜め息交じりに言うジュピウス。確かにとアシュガルが同意を示し肯いた。だが彼はしかしと前置き告げる。
「
それにミュールが指を弾き続く。
「ヒミツを暴いて技術を手に入れれば私たちのマデウスにも組み込める!」
得意そうにし、簡単な事だと余裕の笑みを見せるミュール。するとそれへ、温かいココアを飲んでほっと一息吐きながらのユノがぼそりと言った。
「……そうなるとレオン氏にお世話になる事になりますね」
「げ……あー、やっぱりそーなる……?」
「純粋なマデウスであるユノはマスター・ジュピウスが居れば問題ありませんが、そうではないお二人のマデウスにはレオン氏の整備が不可欠ですから、当然です」
それを聞くや大きな溜め息を吐いて両腕を伸ばし、椅子の背もたれにもたれかかるミュール。レオンというもの狂いのエンジニアの世話には極力なりたくないというのが本音であった。
「何にせよ、今は出てきたやつを叩く他あるまい。何、おかげで聖戦は行われないのだから、今の内にこういう平穏は愉しんでおこうじゃないか」
目の前のパンケーキを小さく切り分け一欠片口に運び舌鼓を打つジュピウスが、それを飲み込むと告げる。彼の言葉に一同はすぐ笑みを浮かべ肯く。
世間はどうであれ、彼ら魔法使いたちにとっては聖戦こそが本分。そして聖戦は本来、共闘などあり得ぬ争い。こうして共に午後を過ごす共であろうとも敵になり得るのである。
それを鑑みればデストラクターの襲撃とは彼らにとって、決して嫌な事と言うばかりではないのだろう。
そう、少なくとも今のこの時点では――
――END――
摩天浄化マデウス ――ナイトキャリバーン外伝―― こたろうくん @kotaro
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