2話 『ギーシャ』誕生!?
バイクのエンジンをかけ、乗りかかったところで俺を呼ぶ声がした。
ねね 「終わったら会う約束したじゃーん」
俺は落ち込みすぎて、約束をすっぽかしていた。
「あっ、すみません。忘れてましたー」
ねね 「ねぇ、きいて、きいて⤴︎︎︎︎︎」
彼女は目をキラッキラに輝かせながら手に入れた白魔道士の入門書を掲げている。
ねね 「やったぁこれで私も白魔道士の一員だぁ⤴︎︎︎︎︎」
「良かったですね」
ねね 「周くんねなんかテンション低くなぁい?」
「そ、そうですか?」
ねね 「ねぇ、ねぇ勇者になれたの?」
(先程勇者になる宣言をしてしまったため、ここでトラッパーなんて言うのは俺のプライドが許さない!)
「うん、なれましたよ」
ねね 「じゃあ、そのリュックからとび出てるスコップはなに?」
「あ、あぁこれはうちの両親が農家でしてー えへへ」
(おい!ふざけんなじじぃ、こんな大きなスコップ渡してくんじゃねぇよ、せめて折りたためるやつとか...)
ねね 「へぇ⤴︎︎︎︎︎周くんの両親って農家なんだぁ⤴︎︎︎︎︎」
(えぇぇ、嘘が通ったよ、やっぱこいつ生粋の馬鹿なんだぁぁ よかったぁ)
ねね 「でも、最初会った時なかったよね?それ」
(なんだこの女ぁ 勘だけはよく働く奴め)
「見えなかっただけじゃない?」
ねね 「そうかなー」
目を瞑り最初に会った時のことを思い出そうとしてる。
ねね 「うちもそのスコップ持ってみたい」
(何言ってんだよ こいつはぁ)
「ダメです」
ねね 「なんでぇ⤵︎いいじゃーん」
「ダメって言ったらダメです」
ねね 「いっかいだけだからぁ」
そう言って俺のリュックに手を伸ばしてきた。
「だめだってばぁ」
事態はリュックの引っ張り合いになった
ねね 「えい」
機転を効かせたのか、ねねがリュックをいきなり離した。
俺はリュックを掴んだまま、地面に尻もちをついた
「いってて」
ねね「ごっめ〜ん」
目を開けるとリュックの外に1冊の本が落ちていた。
(あ、あれはトラッパーの入門書)
(それだけはみないでくれぇぇえ)
ねね 「ん、なんだこれ」
ねねが本を拾った
ねね 「トラッパー??」
(おわった 俺の人生終了だ)
ねね「周くん、トラッパーなの?」
「話すと長くなるんだけど...」
俺は昨日の出来事やさっき起こったことを全部説明した。
ねね 「それは災難だね」
真剣な顔で言ってるつもりだろうか、笑いが全く隠しきれてない。
「もういいんだ、おれにはねーちゃんは救えない」
そう言って立ち上がり帰ろうとした俺の腕をねねは掴んだ。
ねね 「周くん、トラッパーだとおねーちゃん救えないの?」
「そんなことはないですけど...」
別人かと思うぐらい、真剣な顔だった。
「でも、トラッパーは脇役で主人公的なポジションじゃないし...えっとそれに比べて勇は・・・」
ねね 「じゃあ、勇者やればいいじゃん⤴︎︎︎︎︎」
俺が説明している最中に割り込んで言ってきた。
「どういうことですか?」
ねね「だから⤴︎︎︎︎︎勇者って偽って冒険するってこと」
一瞬、こんな上っ面な女をすごいと思ってしまった自分がいた。だが、やっぱ馬鹿だった
「でも、ギルドに参加する際に職業を記載するじゃないですか」
ねね「あ、そっか」
「偽造なんてできませんって」
ねね 「てか、そんなん嘘ついて勇者って書けばいいだけじゃん⤴︎︎︎︎︎」
「それはそうですが...」
「勇者のスキル覚えれませんし、なんていったってパラメーターが勇者とトラッパーじゃ、天と地の差ですよ。」
ねね 「ふっふっふぅ」
急に嘲笑うかのようにねねが笑う、なんかいい策でもあるのか。
ねね 「周くんが鍛えればいいのです⤴︎︎︎︎︎」
(結局根性論じゃねぇかぁ!!)
ねね 「周くん、勇者になる理由は他にもあるよね〜⤴︎︎︎︎︎?」
「べ、別にないけど」
ねね 「はいっ 嘘つき〜 顔に出てまぁす⤴︎︎︎︎︎」
「なっ、」
どうやら俺は隠すのが苦手らしい。子供の頃もそうだった、嘘をついてもすぐにばれてしまう。こんな俺がトラッパーであることを隠し勇者として、生きれるのか。
ねね 「周くん、琴葉の事好きでしょ⤴︎︎︎︎︎」
「別にっ、ただの幼馴染ですし」
ねね 「さっきも言ったけど、顔に出すぎ⤴︎︎︎︎︎」
「...」
ねね 「琴葉はって勇者の家系なんだよね〜 だから勇者じゃないと結婚できないじゃん⤴︎︎︎︎︎」
「そんなことは前から知ってますよ」
ねね 「だったら尚更、偽り勇者にならないと!
うちが手伝ってあげる」
「あ、、ありがとうございます」
ねね 「でも、それにあたって条件があるんだけど⤴︎︎︎︎︎」
(やっぱ、こういう展開かぁ まぁ弱み握られてるしなぁ)
ねね 「まず1つ目」
「って、、条件何個あるんですかっ!!」
ねね 「え、3つだけど...」
(まじかよ、この女ぁ 俺がトラッパーになったことをいいことに...)
ねね 「とりあえず、その敬語を辞めて!!」
「え、なんでですか?」
ねね 「あぁあもうそれ、それ辞めて!!」
考えてた条件ではなかったため、素に返してしまった。
「わかったよ」
ねね 「うん、いいかんじ⤴︎︎︎︎︎」
何故かテンションが上がっている。
ねね 「じゃあ、2つ目ね せっかく友達になったんだし、お互いをあだ名で呼ぼうよ⤴︎︎︎︎︎」
「あれ、なんだっけあだ名」
ねね 「ベ ネ だってば」
『ベネ』をこれでもかってほど強調してきた。
「ベネね、それはいいけど、俺にあだ名なんてないぞ?」
ベネ 「じゃあ、うちが考えてあげる⤴︎︎︎︎︎」
「任せたよ」
(こういうタイプの女子はあだ名をつけるのが上手いだろうし、心配はないかな)
ベネ 「決めたー!! 偽り勇者だからぁ⤴︎︎︎︎︎『ギーシャ 』ね」
「え...」
(おい!!どこがあだ名つけんの上手いだよ、あぁんさっきの俺あぁん?)
ベネ 「どお?気に入った?」
「とてもいいと思うよ」
何も無かったかのように爽やかな顔で言い放った。
大卒トラッパーの下克上 〜 偽り勇者は今日もまた嘘をつく 〜 うんたけ @Tenguuuu
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