1話 勇者になるはずが...
ティロティロティロティン〜♪。
ティロティロティロ バタン
騒がしく鳴るスマホを前日同様、地面に落としたところから1日が始まった。
今日から職業が与えられるが、昨日は疲れていたのであろう、緊張もしないでぐっすりと寝れた。
下に降りると、母さんが朝ごはんを用意してくれていた。
「あまね、市役所に遅れないように行きなさいよ?」
「う、うん わかってるよ」
俺は両親とした農家になる約束を破り勇者になろうとしているのだ、昨夜は言い出しづらくて言えなかったのだが...
「それのことなんだけど...」
「おぉぉ、あまねー 今日から早速畑の手伝いしてくれよなぁ」
嫌なタイミングで親父が来てしまった。
「お、おう 任せとけ!!」
食べ物が喉を通らなかった。
食事を終えた俺は家を後にして、市役所に向けてバイクを走らせた。
両親には悪いけど帰ったらちゃんと言おう
と自分に言い聞かせた。
市役所に着くと何人かもう待っていた。
何故かこちらをジロジロみている女の子がいる。
そんなことは気にせず待合席に向かおうとその子の前を通り過ぎようとしたその途端、俺に話しかけてきた。
??? 「ちょっとあんた、琴葉の幼なじみの......」
女の子は目を瞑り名前を思い出そうとしている。
(ひょっとして知り合いなのか?)
「神来社 周です。」
??? 「そうそう、あまねくんだ! 私に見覚えない?」
「はぁ..」
??? 「えーー ちょーショックぅ⤵︎ ︎ まぁいいから隣座りなよ!」
こういうタイプは何だか苦手だ。
「すみません。どなたでしょうか?」
??? 「ほらぁ⤴︎︎︎︎︎琴葉の友達の 慈雨ヶ崎 ねね って言うんだけどぉ ⤴︎︎︎︎︎」
「聞いたことあるような...ないようなぁ」
慈雨ヶ崎「あまねくん、ひどいなぁ⤵︎ ︎」
「ご、ごめん」
本気で落ち込むタイプには見えないが、一応手を合わせて謝っておく。
「そ、それで慈雨ヶ崎さんも...」
慈雨ヶ崎「ウチの事は『ベネ』って呼んでよ⤴︎ 」
なんだそれ と思ったが、心の中で留めた。
「初対面ですし、ねねさんでいいですか?」
ねね「まぁ しょうがないからいいよ」
明らかに不機嫌そうな顔になった。
「ねねさんも今日誕生日なんですか?」
ねね「そうそう、あまねっちと同じだったんだね笑」
『あまねっち』にツッコミを入れるのは控えた。
「どんな職業を希望で?」
ねな「ウチは小学生の頃から白魔道士になるって決めてたの⤴︎︎︎︎︎」
目をキラキラさせながら語っている。
「凄いですね、そんな前から...」
ねね「あまねっちはなにを希望したの?」
「俺は...一応 勇者を希望しました」
ねね「えぇぇぇ⤴︎︎︎⤴︎︎ すっごぉいじゃん⤴︎︎︎︎︎」
甲高い声が市役所に響き渡り、みんなの注目を浴びた。
「ちょっと!!し、しずかにしてくださいよぉ」
ねね「あっ、ごめん」
「でさぁ⤴︎︎︎︎︎いつから勇者になろうと思った の?」
俺の耳に口を寄せ小さな声で言った。
「それは...」
『周さーん 神来社 周さーん 』
ついに順番が来てしまったようだ。
ねねさんと終わったあとも会う約束をし待合室を後にした。
コンコンコン
「はいっ どおぞー」
「失礼します」
俺は目の前にある椅子に腰掛けた
国のお偉いさんなのか、随分優しい顔をしていて、少しほっとした。
「えっと、神来社 周くんね 君、昨日の夜に希望書の変更を申し出たでしょ?」
「あ、はい 何か問題がありましたか?」
「珍しいですね、前日に変えるなんてことは異例なんですよ」
先程までの優しい顔が一変して険しい表情になった。
「単刀直入に言いますよ」
とても嫌な気がした。
「あなたの希望は通りませんでした」
頭が真っ白になった。それもそのはず幼馴染には昨日勇者になる約束をし、両親とは農家になる約束をし、更にはねねさんにも勇者と言ってしまったからであった。
「えっと、、それはどういう...」
こんな言葉しかでてこなかった
「ですから、あなたが希望してた勇者は通らなかったということです。 ですが安心してください 戦闘系の職業となっているので」
「ほっ、ほんとですか!!」
(勇者にはなれなかったものの戦闘系の職業ならまだアイツらとの約束を守れる よかったー)
「えぇ ではこの用紙を」
俺は恐る恐る渡された用紙を手に取り自分の職業を確認した。
そこには俺の名前とその下に罠師【トラッパー】の文字が書かれていた。
何度見返しても変わらぬ事実、冷や汗が止まらなかった。
昨日散々バカにした、中卒がなるような職業に大卒の俺がなってしまったのだ
何かの間違いだと思いたい俺は必死におじさんに駆け寄った。
「俺は、大卒ですよ なんでトラッパーなんですか!前日に変更したのが悪かったんですか?」
「なんでと言われましても...最近勇者の数が大幅に増えまして、需要が減っているんですよ」
「そ、そんなぁ」
「では、トラッパーの入門書と、道具を、お渡ししますね」
と言われ、ほかの職業に比べ明らかに薄い入門書と落とし穴にしか使えなさそうなスコップを頂いた。
しょってきたリュックに収まらないほどのスコップだ。
「では、たのしい冒険者ライフを」
早くおれを追い出したいのか、別れ際のセリフを言ってきた。
俺は落ち込み何も言わず部屋を出た。
何も考えられなくなった俺はバイクに向かい帰ろうとした。
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