大卒トラッパーの下克上 〜 偽り勇者は今日もまた嘘をつく 〜
うんたけ
introduction 『チーズINハンバーグ 』
ティロティロティロティン〜♪。
ティロティロティロ バタン
布団の中から伸ばした手がスマホを強く床にうちつけた。
鳴り止まぬ音...毎朝聞いていると苛立ちさえ覚える。朝が来る恐怖さえ覚えた時もあった。
何故だろうか、起きる気がしない。大学でイケイケだったやつはこんな朝を迎えているのだろうか?
家ではゆっくりさせてくれよと勝手に自問自答する。
それでもスマホは俺に起きろと音を響かせた。
スマホのアラームを解除し、ホームボタンを押すと新着メッセージが3件来ていることに気がついた。
レオからだった。
レオ> お前、明日誕生日だろ?
レオ> 今日の夜、飯食いに行こうぜ!
レオ> 琴葉も誘ったから久しぶりに3人で会
おうぜ!
まじか、楽しみだわ
「また、3人で会えるのか」と無意識に嬉しさが吐露した。
俺には2人の幼なじみが居る。それが今連絡をとっていたレオだ。 名前は武神 麗央。俺とは良きライバルであり、全てをさらけ出せる仲だ。
もう1人は神崎 琴葉。とても友好的で、いつでもクラスの中心な女の子。
俺ら3人は小中高のみならず大学まで一緒の仲良し3人組。最近会ってなかった分、今夜が楽しみでしょうがない。
あまねー 起きてんのー?
母さんが下で俺の名前を呼んでいる。
「わるい、わるい、レオから連絡来ててさ」
階段を降りながら事情を説明する。
「あら、懐かしいわね。 そういえば麗央くんはもう職業与えられたのかしら?」
「いや、レオは俺の誕生日のちょうど1ヶ月後だからまだだよ」
「あなたもついに明日、25になるのね〜、時間が流れるのは早いわぁ」
嬉しそうに母さんが朝食を用意してくれた。
「あまね 、無理して農家継がなくていいのよ?」
「でも、もう決めたことだから」
「そうなの、それならいいけど」
『かあさぁぁん 』と、外から大きな声が聞こえた。
聞きなれた親父の声だ。
母さんが足早に外に出ていった。
そういえば、小さい頃3人で戦闘系の職業に就いて最強のランカーになる約束したなぁ...
でも、いいんだ。 両親が少しでも楽できるように俺も農家になるって決めたんだから。
自分に言い聞かせながら、両親が育ててる野菜でできたサラダを食べた。
うまい! やっぱりうちの野菜は美味いなぁ。
よし、俺も美味い野菜つくれるように頑張るわ
25の誕生日前日にしてようやく心が決まった俺は、清々しい気持ちになっていた。
この世界は、25歳になると、国から職業が与えられるのだ。
職業は経歴に沿って与えられるため、皆必死に良い大学を目指す。
25の誕生日の数日前に国へ希望の職業を申請し、ある程度の希望の通った職業に配置される。
俺らは大学でも、イケイケであったため3人とも苗字に神がつくため、周りから三神一体【トリムールティ】と呼ばれといた。
誰が言い始めたか知らないけど響はなんだか嫌いじゃなかった。
夜までやることがなかったので、職業リストを確認した。
「えっとー、戦闘系の職業はっと...」
「あった、あった」
「こんなに種類あるのかよ!?」
農家になるのが当たり前だと思っていた俺は戦闘系の職業に関しては無知だったのだ。
戦闘系・Sランクと書かれているページを開いた。
大きな文字で勇者と書かれている。
「やっぱ勇者かっけぇなぁ」
勇者とは誰もが1度は憧れる上位職業である。
俺はレオと同じ大学に行きたかっただけなのに...俺の卒業した大学は勇者を目指すのに充分すぎる大学だったらしい。
そういえば、あの大学に下位職業である農家を目指してるやつなんて一人もいなかったな...
「って!農家は下位職業じゃねぇーし」
「そもそも職業に上も下もねぇっつーの」
そう言いながらも戦闘系の職業について調べてみた。
「ふぅん、白魔道士に黒魔道士ねー」
「ドラゴナイトかぁ...っておい!!めっちゃかっこいいな」
「俺にもなれるかなぁ...」
自分がドラゴンに乗っている姿を想像し、思わず笑みがでてしまった。
一応下位職業のページも、見てみることにした
たまたま戦闘系・Fランク のページが目に止まった。
「罠師【トラッパー】ねぇ Fランクってことはせいぜい中卒がなる職業だろ」
「どうせなら勇者になりてぇなぁ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
記者「勇者様今回、魔王の1人を倒したそうですが、ズバリ勝因はなんだったのでしょうか?」
「まぁ、あれですね、ズババババーンってやってやりましたよ。」
記者「??」
「次の仕事もあるんで、失礼しますね。」
と、言って偉そうにその場をあとにした。
勇者特集の取材があると、テレビ局に向かっている途中、口座にいくら振り込まれているかスマホのアプリで確認してみると、
「ま、まじかよ1億2000万ふりこまれてんじゃん!!」
心の底から『勇者最高』の4文字がこみ上げた。
てんてけてんてけてんてけてんてけてんてけてん♪
てんてけ
てんてけてんてけてんてけてんてけてんてけてん♪
マネージャーからの電話だろうか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
てんてけてんてけてんてけてんてけてんてけてん♪
てんてけ
てんてけてんてけてんてけてんてけてんてけてん♪
「ん?レオから電話だ」
>>おい!何してんだよ?琴葉もう来てんぞ!
>>うわっっ、もう7時じゃん!!
>>待ってるから、はやくなー
>>わり、すぐ行く
どうやら俺は勇者になった夢を見てたらしい。
俺は急いで、支度をし、近くのファミレスまでバイクを走らせた。
カラン コロン カラン♪
レオが俺に気づき手を振っている。
「おーい、こっちこっちー」
俺は申し訳なさそうに席に向かった。
「まったく、、あまねはいつもそうなんだからぁ」
「ごめん、ごめん職業リストを読みながら寝ちゃったんだよね」
「なにそれー笑」
久しぶりに会ったとは思えないほど、気さくに話しかけてくれる琴葉にほっとした俺は琴葉の横に座った。
「あまねは何食べるんだ?ほらメニュー」
「じゃあ、このチーズINハンバーグで」
「やったー!!」
レオと琴葉がハイタッチをして、喜んでいる。
「え....なに?」
レオ「おまえが何食べるか予想してたんだよ。」
琴葉 「あまねは小さい頃から変わらないねぇ、毎回チーズINハンバーグ食べてたもんね」
琴葉が満面の笑みでニッコリした。
「じゃ、じゃあ変えるわ」
急に恥ずかしくなった俺はメニューをもう一度見ようとしたが、レオが店員を呼んでいたらしく、チーズINハンバーグを頼まざるをえなかった。
レオ 「あまね、明日ついに25だもんなぁ、おめでとう」
「お、おう ありがとな」
レオ 「そこで話があるんだけどさ...」
少し嫌な気もしたが話を続けさせた。
レオ 「2人とも、あの時の約束覚えてるか?」
琴葉 「最強のランカーになるって話?」
レオ 「おぉ、よく覚えてたな」
琴葉 「まぁ、私はそのつもりで大学卒業したんだもん」
琴葉がほっぺを膨らませた。
レオ 「あまね、おまえは勇者にならなくていいのか?」
先ほどの空気が一変して重たい空気になった。
琴葉 「まって、レオ あまねは農家を継ぐって話が...」
レオ 「そんなん知ってるよ...でも、俺はやっぱり、この3人で旅がしたいんだ」
琴葉 「それはそうだけど...」
気まずさに耐えられなくなった俺は、顔を下げている2人に声をかけた。
「俺が農家になっても、2人との関係はなくならないよ?」
レオ 「それはそうだけど...」
琴葉 「天音、本人が決めることだからね」
無理に場を和ませようと気を使ってくれている。
レオ 「あまね、よく聞いてくれ 愛莉咲ちゃんについての話だ。」
琴葉 「その話はしないって...」
レオ 「しょうがねぇだろ」
愛莉咲とはダンジョンに行ってから、消息不明となってしまった、俺の実の姉だ。
身内が消息を絶ち、俺自身が無意識に戦闘系とかけ離れた農家という道を選択していたのかもしれない。
レオ 「ついこないだ、こんな紙が見つかったんだってよ」
スマホの写真を俺に見せてきた。
そこにはボロボロになった紙切れに一言
『Amane K』
「なんで俺の名前が??」
レオ 「この字に見覚えないか?」
確かに特徴のある字ではあるけど...
「これって、、、ねーちゃんの字じゃん」
レオ 「そうなんだよ、愛莉咲ちゃんは生きてるかもしれない」
「じゃあ、なんでこんな紙切れに?」
… … …
連絡手段の多い現代でなぜ紙切れなのかとふと疑問に思ったが、すぐに解消された。
「ダンジョンに閉じ込められてるのかもしれない」
レオ 「その説が1番あり得ると思う」
琴葉 「だから私たちで愛莉咲ちゃんを助けようよ」
「...」
言葉がでなかった。姉が生きてる可能性があるが、それ以上に自分も消息不明になってしまうのではないかという恐怖心が、勝ってしまったのだ。
レオ 「おまえがしっかりしなくてどうすんだよ。いいのかよあんなに優しくしてくれた愛莉咲ちゃんを助けなくて」
必死に説得してくるレオに心を打たれた。
「...やるよ」
琴葉 レオ 「え?なんて」
「俺、やるよ やってやる 勇者になってねーちゃんを助けに行く」
琴葉とレオが顔を合わせて、喜んでいる。
レオ「そうこなくっちゃな」
「俺今から、勇者の申請してこなくっちゃ」
琴葉 「今は、6時30分前だからチーズINハンバーグ食べてからでも間に合うんじゃない?」
「やべ、話に夢中になって食べんの忘れてた!」
中のチーズが少し冷えてしまったハンバーグを食べ終えた俺は、市役所に急いだ
到着したのは7時になるかならないかぐらいだった。
受付へ急ぐ。
「すみません、職業希望の変更をしたいのですが...」
「個人情報の入力をお願い致します。」
どうやらギリギリ間に合ったみたいだ。
「では、神来社 周さんですね。 農家からどの職業に変更しますか?」
「えっと...勇者に変更をお願いします。」
受付の女の人は少し驚いた表情を浮かべたが、俺の経歴を見たのか、それ以上深く質問はしてこなかった。
「ではまた明日、ここで職業が授与されますので、忘れずに来てくださいね」
俺は軽く会釈をして、市役所を後にした。
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