~第3章~ イソガバマワレ
~惑星 オーガス編~
第28話 鬼の目にも涙!?
――コウイチロウはカレンと別れた後、秘密基地にていつものように作戦会議を始めるのであった。
「コウ君、一旦寄り道になるが、気持ち切り替えていこう!」
今回のコスプレはラガーシャツにヘッドギアだ。熱血教師風だろうか。少し楽しみになってきている自分が怖い。
「さて、恒例の転星先発表だ!」
『惑星オーガス』
現地人の顔が怖い
極めて善良な人々で、惑星間の交流もある文明レベル
近年、極悪な星人に目を付けられているらしい
「毎度思うんだがこの感想は誰のものなんだ?」
「転星システムなんじゃないのか? 私もよくわからんが」
「とにかく行ってみるよ。スキルが手に入れば儲けもんだ」
「じゃあ、気を付けてな! そろそろ慣れが油断と隙を生むころだ!」
「ああ! 行ってくる!」
ライザは転星システムを起動した!
コウイチロウが転星を完了すると、しばらく先に街?らしきものが見える。何故か造りは純和風だ。例によってコウイチロウは『変化』を早めに実行した。
「
ふむ。これで良しと。何だか体は赤いし妙に筋肉質だし、口の中には牙の存在を感じる。どうも嫌な予感がするな……。
コウイチロウは自分の姿に違和感を感じつつも、とりあえず情報収集のために村に近づいた。
「よりにもよってまた雨の日か…。早く雨宿りしたいな」
「いらっしゃい! お客さん! 雨のなのに傘もささずにどうしたんだい!」
「わああああああああぁぁっ!!?」
「ええええええっ!?」
コウイチロウはたまたま外に出ていたのであろう何某かの店の店員を見て叫んでしまった。というのも、店員の姿が鬼のようだったからだ。
それも童話などで出てくるようなメルヘンな鬼ではなく、どちらかと言うとオーガと言うか悪鬼と言うかとにかく凶悪な姿をしていたからである。
「ど、どうかしたのかい!! お客さん!」
「す、すいません。急に話しかけられてびっくりしちゃって」
「か、考え事でもしてたのかい?」
顔が怖かったとは言えないよな……
「そ、そうです!」
「雨の中ボーっとしてたら風邪ひいちゃうよ!」
「ありがとうございます。ここは何屋さんですか?」
「雑貨屋だよ! ちょうど傘も取り扱ってるって寸法さ!」
「あ、でもすいません。手持ちがなくて……」
「なんだいなんだい素寒貧で傘もささずになんて訳アリかい? 良かったら熱い茶でも飲んでいくかい?」
顔の怖さと優しさのギャップに戸惑いつつも、コウイチロウは好意を受けることにした。
「すいません。甘えます」
「おう! 上がっていきな! 段差に気を付けてな!」
「あ、はい!」
コウイチロウは例によって記憶喪失を装い、しばらくはこの村を拠点にしてみることにした。
『操作』は……一応かけてみるか。
「すいません、この星はオーガスで合ってますか?」
「ああ、そうだよ」
「星の一族って聞いたことありますか?」
「いやあ、聞いたことねえな」
「この星に特殊な能力を持った人や不思議な現象の話は聞いたことがありますか?」
「うーん。ちょっと聞いたことがないねぇ」
結論を出すには時期尚早だが、戦闘系の能力ではないのかな? 派手な能力なら目撃証言なり伝説なりになっていそうだ。よし、『操作』はもういいや。
「ありがとう! ここらで働き手を募集しているところはありませんか?」
「なんだい、そんなことならうちで働いていきな! どうせ行く当てないんだろ?」
コウイチロウはまたしても一人目の町人でいい縁に当たった。転星システムがうまく関与しているのだろうか。そんな疑いさえ持ちたくなる出会いに感謝しつつ、住み込みで働くことになったのである。
今回、コウイチロウがお世話になるのはニーオ商店のニーオさん。商店と言うが、個人経営のコンビニの様なもので、大抵のものはニーオさんのところに来れば揃う。ニーオさんは人情家で、この星も異星との付き合いが始まるまではみんな人情にあふれていたそうだが、いつしか貿易の摩擦で人々の心がギスギスしだしたそうだ。
ニーオさんがコウイチロウを雇うと決めた後、おかみさんに
「またどこの馬の骨とも知らないの拾って! 犬や猫じゃないんだよ!」
と怒られているのを聞いたため、少し心配していたが、
「かあちゃんな、ああは言うけど全然怒ってないんだ。顔もそんなに怒って無かったろ?」
と言うのでひとまず安心した。顔については相変わらず恐ろしいのだが。
「俺が食うに困ってるやつを拾って世話するのは今回が初めてじゃないんだ! わはは」
恐ろしい顔のまま笑うニーオさんにコウイチロウもつられて笑った。自分の笑った顔がどうなっているのか鏡で見たい気もしたが、止めておくことにした。
「ニーオさん! 俺はどうもこういう仕事の経験もあるみたいです。品出しやっときます!」
「お、助かるねぇ! じゃあよろしく頼む!」
コウイチロウは若いころのコンビニバイトの経験を生かして商品の陳列やレジ打ちをすぐにこなせるようになった。
「なんだ! こんなに仕事が出来るなら住み込み分差し引いてキチンと給料も出すことにするよ! 手伝いぐらいでいいと思ってたのにこりゃうれしい誤算だねぇ!」
真面目に働くコウイチロウを見ておかみさんの態度も少し柔らかくなり、ご飯の時にお代わりをするかどうか聞いてきてくれた。
だが、どうもニーオ商店の売り上げは芳しくないらしい。と言うのも近くにもう一軒、チェーン展開している商店があるようで、しかもそこのオーナーが事あるごとに嫌味を言いに来るものだからさすがのニーオさんも晩酌の時に愚痴をこぼしていた。
「あの成金野郎め、近くに店を建てるだけじゃなくうちの悪評までばらまきやがって」
「とんでもない奴ですね」
「幸いお得意さんたちはうちの事をひいきにしてくれちゃあいるがよ」
あの温厚で人情家のニーオさんがここまで言う奴ってどんな奴なんだ……?
翌朝、その噂のナリキ商店のオーナーが派手なファー付きジャケットを羽織って、扇子をパタパタさせて現れたものだからコウイチロウは思わず二度見した。
「お? 見ない顔だな? 新人か?」
「はい、4日ほど前からお世話になっております」
「へえ、まだそんな余裕あったのか余裕だね。ニーオさんも」
「ありがたいことです」
「こっちはこんな店目障りなだけなんだがね、まあいいや。ニーオさんいる?」
「今は外出しているようですね」
「チッ、じゃあさっさと借金返すように言っといてくれよ!」
「借金、ですか……」
「そ、借金!」
さすがのコウイチロウも態度に腹を立てたが、余り立ち入るのも迷惑と思い、こらえた。
「ニーオさん……」
その日は一人で飲みたいと言って部屋にこもったニーオさんだったが、部屋の前を通りかかったとき、ひとすじの涙がこぼれるのをコウイチロウは目撃してしまったのであった……。
孤独な戦隊ヒーローと化した俺はラスボス撃破後を異世界で満喫しますか?→はい いいえ 白那 又太 @sawyou
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