心に残る言葉

バルタンソーセー人

心に残る言葉

「心に残る言葉」


人間誰でも、自分で言葉を習うわけにはいかないから、周囲の言葉に影響される。厳密な意味で、自分の言葉で話すことなどできもしないし、しなくてよい。「自分の言葉で話してよ」と嘆願されて話してみても、つまるところ、自分がこれまで影響を受けてきた言葉を話しているに過ぎない。だから、専門用語で知識武装した研究者でさえも、しばしば自分を語っていることになる。


「雪隠(せっちん)、李時珍(りじちん)、コンドロイチン」


 ある人が、このように自己を表現したとする。これだけでは、といれ「便所、中国の本草学者、軟骨成分」となり、意味不明だが、発言者が古風な言い回しを意味もなく好み、あまりよく知らない知識を振り回し、寒いおやじギャグを年中吐き捨てているような人間だと十分理解できる。


 話が途方もない脱線をしてシベリアまで向かってしまわぬ前に、話をもとに戻そう。


心に残る言葉。過去の偉人の箴言でも、身近な誰かのでも、ビジネス書の一節でも何でもいい。そのような言葉はおそらく誰にでも持っている。一つ注意しておきたいことは、それが誰の言葉であるか分かる限りにおいて、心に残っているという点である。


 今後、ネット社会はさらに拡大し、それに伴い膨大な情報もネット上に蓄積され、スマホを配給された人々は、、ますますネットの言説から大きな影響を受けることになるだろう。そうなれば、心に残る言葉は、著名なあるいは親しい誰かであるとは限らず、現実生活ではうだつの上がらないどこかの人間の言葉が、心に響くかもしれない。


もし、そういう人が他人に心に残る言葉を聞かれたとしたら、出典をバカ真面目に答えるかどうか非常に興味がある。おそらく、恥ずかしいから、自分が考えたことにするのだと思う。


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