第4話 お悩み相談 後編

確かに受け散った。佳織の決意を。


ならば答えようじゃないか。もうこの際告白して、全てまるっと曝け出そう。

きっと佳織なら信じてくれる。、、、よね。

甘菜は、よしっ。と小さく気合いを入れ、口を開きかけたその時


キーンコーンカンコーン。


始業のチャイムの音だった。

「あっ、鳴っちゃったね。また放課後だね。」


甘菜は言った。彼女は少し残念そうな顔をしているが、そこの所、実はほっとしていたのだ。放課後まではまだ時間があるからだ。これで少しは考える事ができる。


「あー。うん、、そうしよっか。でもちょっと安心してるでしょ。時間できたからって。逃げちゃダメだからね。それに私、今日はバイト休みだから。」

と佳織は甘菜にしっかりと釘をさす。

「に、逃げないから!!」

完全に考えていることを当てられ、甘菜は顔を赤くしている。

やっぱりな、と佳織はニコニコと笑みを浮かべた。



時刻は15時。もうすぐ、六時限目の授業が終わる。


佳織はなんであんなに余裕なのかな。もし私と同じような出来事があったとしたらあんなに冷静でいられる筈がない。

やっぱり、大人っぽいからからかな。なんて甘菜は考えていた。

佳織とは同じクラスだが、二人とも日中は、朝の話題には一切触れないでいた。

佳織は普段と変わらず他の友達とも接していた。

それが余計、甘菜を緊張させた。


学校のすぐ近くには公園がある。そんなに大きな公園ではないがベンチもあり、ちょっと話をするにはちょうど良い。

二人とも自転車通学なので、あっという間の到着だ。

駐輪場に自転車を止める。佳織の自転車は赤い色をしている。

色は可愛いのにスタイリッシュな形で彼女に似合っていた。

自分のは地味の普通のママチャリなので少し、うらやましと甘菜は思っていた。


公園奥のベンチに座り、佳織は途中の自販機で購入してきたジュースをカバンから取り出す。キャップを開け一口飲むと、フーと息を吐き出した。それはもしかしたら、緊張の表れなのかもしれない。


一呼吸置いたところで、先に口を開いたのはやはり佳織の方だった。


「さてと、どちらからにする?」

「えっ!!?えーとえーと、、」

甘菜はまさか選択制になるとは思っておらず、たじろいだ。

緊張しているせいか、すぐに答えが出なかった。しかし考えると言う事は、先には言いたくないのだろう。後の方が多少は気が楽だと思ったからだ。

しかしそこは佳織も気持ちは一緒だった。


結局そんな様子を見てか佳織からこんな提案がでた。



「じゃあジャンケンにしよ。それなら公平でしょ。」

まぁそうなりますよね。

「わ、わかったよ。最初はグーからだからね!!」

ここは絶対負けたくないためか念を込めて確認する。



———行くよ最初はグー。  ジャンケン・・・


「パー」

「チョキ!!!」


「勝った〜〜〜〜〜!!」

意外な事に甘菜が勝ったのだ。


「負けた、、まぁ良いよ。どの道言うつもりだったから。先に言っちゃった方が楽だし。」

これは人によっては、負け惜しみと言う風に聞こえてもしょうがないだろう。

しかし佳織が言うと妙に納得してしまう。それを聞いた甘菜は確かにと。

先に言って気が楽になった後、それから聞いた方が良かったのではと思ってしまっていた。

あれ?こう思った時点で私負けてない?と気付き結局、後悔していたのであった。


「フー。じゃあ私からだね。なんだか緊張してきちゃった。先に言っておくけどまだ誰にも言ってないんだからね。本当に甘菜が最初だから。」

珍しく念を押すなと。これはよっぽどの事だろう。

聞くこちら側も緊張してきてしまった。


「実は、、、。私、、私ね好きな人ができたんだ。バイト先の先輩なんだけどとっても優しくて、すごくかっこいいの。」

「え”〜〜〜〜!!!うっそぉぉ!?佳織から好きになるなんて、、、」

「私だって恋するよー///////」


やばい。


佳織は余程恥ずかしいのか両手で口元を抑えている。頬は赤く染まっていた。

そんな乙女の一面を見せている彼女の隣にはと言うと、顔面蒼白で白目をむきそうな女がいた。甘菜だ。


———やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい



やばい!!!!!


完全に物語の流れを自分に寄せていた。まさか彼女の秘密が、そんなピュアでそんな普通の事だと思っていなかった。

佳織ももしかしたら宇宙人と出会った。それぐらいの事を予想してた。

バカか!私は。自分みたいな事がそう簡単にあるわけがない。

自分の無駄にポジティブな思考を恨んでいた。


「あれ?どうしたの甘菜。なんか急に顔色悪くなったような感じするけど。」

大丈夫?と私の顔を覗き込んできた佳織の顔はと言うと乙女100%。キラッキラに輝いていた。


やめてーーー!見ないで!!そんなキラキラした眼差しで私を見ないで〜〜〜!

あーもう死にたい。今すぐに!!


言えない、言えるわけがない。私が湖と言う無機質な物に恋をした(確定ではない)とその星とか言う変な意識と会話をしたなんて。


絶対引かれる。


「ぷっ。もしかして私の秘密もっとおかしな事だと思ってた?」

そんなわけないじゃんと彼女はケラケラと笑い出した。


「だってだって『私、今緊張してるんだよ』とかなんかちょっと意味深な言い方してたじゃん!!」

甘菜は半泣きで子供のような言い訳を始めた。


「ふふふ。あれはからかっただけだよ。だって甘菜だって誰かに恋してるんでしょ?それなら私だって、それに見合った秘密しか教えないよ。」

うっくくく。佳織はもはや笑いを堪えきれなくなっていた。


「それで私の秘密はどんな物だと予想してたの?あ、、、じゃなくてごめん。

甘菜の番だよね。秘密。教えて」


ですよね。そうなりますよね。

もはや甘菜の魂は抜けかけていた。


「うぅ。・・・・・・・・わかったよ言うよ。今言わなかったらもっと言いづらくなるからさ。」


実は、、、


一呼吸、間を置き意を決して話す。


「私、、湖の星の人と出会ったんだ。そしてその人は湖に恋をした者としか会う事ができなくてそれが私で。私は湖に恋をしてるんだって。だから僕と出会える事ができたんだってそう言われたの。」


「うん?・・・・・ん?・・いや全然意味わからないやごめん」

完全に佳織はフリーズしてしまった。頭での処理が全く追いつかず、考えることすら放棄していた。


「違うのーーーーー!!!ごめんね!ごめんね!ごめんね!ごめんね!!!大丈夫だから!!!」


「えっ!?違うの?えっ!?何が!?」

やばい佳織もテンパってきている。


「いや違くはないんだけどーーー!!!ごめん!!!」

「えっ!?違くないの!?!」

二人とも顔を真っ赤にし、もはやお互い訳がわからなくなっていた。


えっ?ちょっと甘菜大丈夫!?


そう声をかけようと思うのと同時に甘菜は白目を剥いてその場に倒れてしまった。


時間で言ったら数分だろう甘菜はすぐに目を覚まし、隣には佳織がいた。

「大丈夫??良かったすぐ気がついて。いきなり倒れたから本気でびっくりしたよ。

いや、その前も本気でびっくりしたけど」

「佳織ちゃん、、ありがとう。起こしてくれて」

そのままベンチに倒れた甘菜を引き上げてくれて元の位置まで戻してくれていたのだ。


「・・・びっくりしたでしょ?引いた?」

「引きはしないけど、まぁびっくりはしたかな。なんか甘菜の反応見る限り、本当っぽいし。嘘はつかない子だとは思っているから信じるけど、、、」


「やばいよね。」


「まぁ取り敢えず、お姉さんに聞かせてみなさい」



******



「なるほどねぇ、、、。取り敢えず、その話が本当だとして、そもそも甘菜は、本当に恋してるの?それは湖になの?それともその星の人なの?」

「それが良くわからないんだよね。私自身は全然自覚ないんだけど、私が恋したから自分が現れたって。そういったんだ。」

「まさか、それ言ったこと信じてるの!!?」

「信じてるとかじゃないけど、確かに自分の中にそんな感情も少しはあるなって思ってさ。」

「甘菜ちょっとそれ危険すぎない!?そんな得体の知れない物だし。何かあったらどうするの?」

「そうだけど、不思議と恐怖みたいなのは感じなかったんだよね。」

「でも一応警戒はしなよ。で恋してます宣言された後、どうしたの?」


「逃げちゃったんだよね私。あまりにも緊張しすぎて、その場から。」


甘菜はあの時逃げたのだ。全力で走って逃げた。

ビショビショに濡れた制服のまま、人目を気にする事もなく自転車を全力で漕いでだ。


「頭の中ぐちゃぐちゃになっちゃって、どうして良いのかも考えられなくなって逃げる事しかできなかったの。」

「そっか。でもそれで良かったんじゃない?結果的に何事もなく済んだ訳だし。」

「でもちょっと、後悔もしてるんだ。流石にいきなり逃げるのは酷かったかなって。」

「流石、甘菜だね。そんな人にも優しいんだ。」


じゃあこれからどうするの?と佳織が尋ねると


「実はもう一度、会いに行こうかなって思ってるんだ。星の人に。」

まぁまた会える保証はどこにもないんだけどね。と甘菜は笑った。


「・・・まぁここまで、聞いちゃったらほっとく訳にもいかないよね、、、よし。私もいく。」

と佳織は甘菜の事が心配なのと、そんな漫画みたいな話本当にあるのかと言う好奇心からついていく事にした。

「甘菜に何かあったら大変だからさ。つい行ってあげる」

「佳織ちゃん、、、」


甘菜はやはり不安だから、誰かついて来て欲しいと言うのが半分と、そんな得体の知れない物に友人を巻き込む訳には行かないと言う感情が混ざり合いなんとも、どっちつかずの顔をしていたのであった。


だが佳織にはわかってしまうのだ。


「ふふふっ。甘菜ってば思いっきりついてきて欲しいって顔してる。不安なんでしょ?大丈夫だよ。甘菜が大丈夫って言うんだから大丈夫」


「うん、、ありがとう!」

と少し瞳をうるませながらもはっきりと答えたのであった。



「「よし、じゃあ行きますか」」














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星と少女のアバンチュール 山海 宇宙 @3iina3

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