第28話 5月号・編集後記 活字の読めないカタカンナ

 いつも文字ノ泉新聞をご愛読いただきありがとうございます。

 また、異界の皆様におかれましては、MOJI-NO-IZUMI Newsをご覧いただきありがとうございます。


 編集長のカタカンナです。


 こちらの編集後記は、異界の方のみに発信されるということです。弊紙編集の裏側や、わたくしの個人的な秘密について少しだけ書かせていただきますね。


 MOJI-NO-IZUMI Newsは、文字ノ泉新聞社が異界進出を狙った新規プロジェクトです。異界についてわたくしはよく分からないのですが…社長が「ある」というなら、あると思うのが会社員というものです。きっとあるのでしょう、異界。


 わたくしは昨年の11月に弊社に入社し、色々な研修を経てMOJI-NO-IZUMI Newsに配属されました。役職が編集長だったということでお気づきでしょうが、わたくしの研修期間の成績は同期でワースト1だったようです*1。


 早速落ちこぼれてしまった理由は、初仕事の健康相談で判明しました。産業医の先生によると、わたくしは読字困難があるらしいのです。


 生まれてこの方、読解力には自信があったのに。最初は全く信じられませんでした。だって、小説も評論も専門書も、あらゆる書籍を読み倒してきたんですよ、わたくしは!


 まさに青天の霹靂*2でしたが、先生に「一字たりとも間違えずに声に出して読んでみて」と言われてあきらめがつきました。文章の内容は分かるのに、文字を読もうとするとどうやって読めばいいのか全く分かりませんでした。頭が真っ白になるとはこのことです。


 一文字に命を込める記者になるべく入社した同期たちと比べて、見劣りするのは当然です。わたくしは一文字も正しく認識できていなかったのですから。


 このような経緯で失意の底にいたわたくしですが、ある人に助けられ、記者の皆さんに助けられ、無事5月号の発行にこぎつけました。


 これがわたくしの編集人生の集大成になるのかもしれません。


 でも、わたくしに悔いはありません。もしも来月から文字拾いと印刷しか仕事が無かったとしても…この5月号はわたくしの宝物です。


 とても良いニュースが集まりました。異界の皆様にも、どうかこれが届きますように。


 MOJI-NO-IZUMI News 編集長 カタカンナ




 *1:他社の編集の方にお話を聞いたところ、編集長が下っ端なのは弊社くらいのものらしいです!「ジェネリックよりもスペシフィック」は弊社だけの常識のようで、驚きました。これからは、もう少し堂々としようと思います。


 *2:晴れた空に稲妻が走るような、思いもよらない突然のことを指す表現です。こういった出泉語も知っているんですよ!でも文字は読めないらしいです、ふしぎ。

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