06

 翌日、僕は柏田高校の入学式に出席した。

 いよいよ僕も高校生。

 期待と不安の入り交じった新たな生活が今日から始まる。

 なんて言ってみたが、教室の席にいる今の僕は不安のほうが数倍強かった。

 クラスの自己紹介。

 やがて順番がやって来て、彼女が立ち上がる。

「電脳妖怪が出ると聞いて他県から引っ越して来ました、栗谷エナでーす。奇譚、怪談、都市伝説を知っている、あるいは妖怪や怪異に遭遇したことがあるという人がいたら、是非私に教えてねー。よろしくー」

 栗谷はにこやかに笑って言った。

 そう。

 僕たちは学校どころか、クラスまで同じだったのである。

 栗谷のその自己紹介に、クラスメイトがドン引きしているのが分かった。

 名前順の席でたまたま隣になってしまった僕は、彼女を見ないようにうつむく。

 まさか公衆の面前でこんなことを言うとは……。

 できることなら他人ってことにしたい……。

 しかし栗谷は、席に着きながらこっそりと僕に言った。

「よろしくねー、網代くん」

 僕は返事の代わりにため息をついた。

 どうやら波乱の高校生活の始まりらしかった。

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電脳妖怪 晴間あお @haremaao

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