エピローグ

 数日後――


 僕は明日香さんと明日菜ちゃんと、柊木春香さんのお墓参りに来ていた。

 春香さんは、おじいさんが葬式を出し、両親と一緒の墓に眠っている。

 鞘師警部の話では、森久保英一郎は全面的に犯行を認めて、素直に供述しているそうだけど、謝罪の言葉はないそうだ。

 朝比奈奈緒は罪を認め、深く反省しているそうだ。

 しかし、二人が罪を認めようが、反省しようが、春香さんは帰ってこないのだ。

「結局、春香ちゃんが相談したかったことって、何だったんだろう?」

 と、明日菜ちゃんが言った。

「小田桐航太君のことか、森久保英一郎のことか、朝比奈奈緒のことだったのか。もしかしたら、全然関係ない相談だったのかも」

 と、僕は言った。

 春香さんが亡くなった今となっては、その答えは分からない。

「もしも私が、もう少し早く春香ちゃんに会えていたら、事件は起きなかったのかも。ごめんね、春香ちゃん」

 と、明日菜ちゃんが、お墓に語りかけた。

「明日菜。そんなに自分を責める必要は、ないわよ。きっと春香さんも、明日菜には感謝しているわよ」

 と、明日香さんが、優しく明日菜ちゃんを抱き締めた。

「うん……。お姉ちゃん、ありがとう。春香ちゃん、また来るね」

 僕たちは、明日香さんの車に向かって歩き出した。

『明日菜ちゃん、ありがとう――』

 数歩進んだところで、明日菜ちゃんが振り返った。

「明日菜ちゃん、どうしたの?」

 と、僕も振り返った。

「今、春香ちゃんの声が――ううん、何でもないわ。明宏さん、行きましょう。お姉ちゃんが、待っているわ」

 僕と明日菜ちゃんは、再び歩き出した。

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探偵、桜井明日香9 わたなべ @watanabe1028

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