第5話
幸人は言った。
もしこの宇宙に地球以外の知的生命体が無ければどうなるのだろうか。どれほど美しく神秘的で広大な宇宙もそれを認識するものが無ければ、意味がなくなってしまう。それは、存在しないに等しい。私という自我、すなわちこの世の一切合切を認識しいている私という存在が無くなってしまったら、この世の中の全ての存在はどうなってしまうのか。
「あなたがいなくなってもたんと全てのものは存在していますわよ、あなたが心配なさらなくても。」
「心配? 私が心配したと。私はただ興味を持っているのだ。誰もが興味を持っていきている。毎日続く生活は人間から興味を奪う。子供の頃を思い出すが良い。地球が丸いと聞いた時、こう思わなかったか。地球が回転した時上にある時は良いが下になると地表についているものや人は皆落ちてしまうのではないかと。地球の下にある宇宙の底に。だから宇宙の底は地球のゴミでいっぱいなんだってね。
遠い山を見ながら考えた。あの山の境目はどうなっているのだろうか。平地と山のまさにその境目で、平地からどうやって山へと変化していくのか、この目でみてみたいと。」
「あんたいつまでも子供のようにそんなこと考えてやしませんよ。」
「興味なり疑問なりの答えが見つかるということ。いや興味を持ちその答えを求めそしてその答えを見つける。この過程の繰り返しこそ幸福である。疑問は大人になればさらにその数を増していくことだろう、それは決してなくなることはない。」
幸人よ、人はもはやあなたの年齢を尋ねない、あなたの名を知ることもない。
歴史的偉人の写真や名前がそう大切でないように。その思想が大切なように、それ以外の要素は不必要なのだ。だから人はあなたの容姿、年齢、名前は必要としていない。あなたの思想だけが興味の対象であり、それは空気のように地上を浮遊しているのだ。
荒野で呼ばわる者の声 PHILO(フィロ) @chojin
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