悪性

 初回着陸調査から、もうになる。あれからわたしたちは幾度もの着陸調査を重ね、入植に適した土地や資源状況の詳細な探査を行った。その結果、わたしたちが初回着陸調査で着陸地点に選択した、あの自然公園に初の地上基地が建設される運びとなった。何の偶然か、ロボットたちの都市のすぐ隣に一旦の安定地帯を見出したということだ。

 ちょうど明日は地上基地の建設開始式典が執り行われる予定で、この式典には調査隊のほとんど全員が参加することになっていた。そのため、明日は建設開始の日であると同時に、エラスにはじめてわたしたちの母船が着陸する日でもあった。わたしはこれから始まろうとしている新たな時代に昂ぶる気持ちを抑えきれず、休息を諦めて展望室に赴いた。

 長い船内の廊下を抜けて展望室に行き着くと、生命いのち豊かな惑星を全面に映したパノラマビューが広がる。相も変わらずその光景に圧倒されつつ、ふと展望室の側方に目を向けると、そこにはタレンがいた。わたしは彼のほうに向かい、横に並んでエラスを眺めた。

「エラス。美しい星だ。コルネスを思い出すね」

 タレンは大きく頷き、笑みをこぼしながら訊いてきた。

「ロボットたちついて、君はどう考えているかな」

 わたしは迷うことなく答えた。

「ロボットたち――いいや、エラス人は、立派な知的生命的存在だとわたしは思う。エラス人たちはものあいだ自らの種を持続させ、この星の知性として輝き続けた。その事実は揺らがない。それに、彼らの内に厚く積もった文化への渇望は、反転し、文化への敬愛となって広く共有されている。これほどまでに、であろうとし、その本当の価値を理解している種族は、この果てしない宇宙を探してもきっと彼らくらいのものだ」

 そこで、わたしは訊き返した。「タレン、君はどう考えているんだ」

「わたしも同感だよ。エラス人たちはあのままで立派な知的生命だ。でもね、わたしは気になりもするのだ」タレンがこちらを向いた。「彼らに掛けられた枷を外すことは、わたしたちにならできるのではないかとね。仮にそれをしたら、彼らはになるだろうか――その先でも、文化を愛し続けるだろうか」

 わたしは驚いた。

「タレン、それは君の独断でできることでもないだろう。エラス人たちがどう考えるかもわからないし――なにより、本星の連中が許すとも思えない。おそらく、連中はエラス人をそのままにするよう言うだろう」

「そうだね。きっとそうだ。わたしだって言ってみただけさ。だが――」タレンは、こちらを向いたままにやりと笑った。

「わたしたちは、を持つ種族だからね」

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きれいな星 遍歴職人 @strv13570

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