エピローグ(裏)バットエンド編
※グロテスクな表現が苦手な方は見ないようにしてください。
昨日の夜は夢を見た。
それは、俺と謙と照美が仲良く暮らしているという内容の夢だ。実際、昨日の昼までそうだと思っていた。が、謙に助けの電話をかけようと思った瞬間に見てしまったネットのとある記事により、俺の照美への、八舞への信頼は消えた。
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それは、遊園地で監禁されそうになっていた時
(こういう時は、謙に助けを・・・!)
そう思ってスマホを開いたその時だった。
【速報】1年ほど前に年下の女子中学生に性的暴行を加えたとして逮捕された赤羽 実氏、冤罪として釈放。
一瞬、何言ってるのか分からなくなった。あのクソ親父、まだ死んでなかったのか?っていうより冤罪?どういうことだ?
俺は、父が家出した日から周りと距離を置き、ニュースなど見てなかったもので父がどのような状況かなど知らなかった。
それでもその時はあまり気にせずに謙に急いで電話をした。
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考えるだけでイライラする。
改めて考えると全て納得が行かなくはない。八舞がなぜ俺の事を好きというのか、なぜ父の件は冤罪なのか、なぜ元カノは頑張れと言ったのか。その他もろもろ込めて、分かってしまった。
翌日、俺は放課後謙抜きで話がしたいと屋上へ八舞を呼んだ。
「なんですか・・・?」
これは憶測だが。憶測だが、その憶測が事実にならないことを祈りながら尋ねる。
「なぁ、もうやめようぜ?」
「なにを・・・ですか?」
「恋人ごっこはさ。」
彼女は顔を暗くしつつも笑顔でこう言う
「何言ってるんですか?」
「お前には別に好きな人がいる。そうだろ。」
「え・・・?一体何を根拠に・・・」
「なら、俺の憶測を聞いてくれよ。」
考えてみると、話は早かった。
こいつが好きなのは俺ではなく謙だということさえ理解すれば。
俺たちは基本的に護衛の謙を含め3人でデートに行く。そうすると毎回のようにはぐれてしまい、途中で2人っきりの時間ができる。つまり、俺を使えば謙と仲良くなれる。そう考えるのが妥当だ。
謙は中学の時、ストーカー被害に悩まされていて、俺の事件の時はその被害にあっていた。
言ってしまえば、謙が大変な時に俺は助けられなかった。だが、もしこいつが謙を助けられたらこいつは俺よりも優位な立場にたてると考えたのだろう。
俺の元カノを脅して、父親を逮捕させ俺をどん底に陥れ、苦しんでいた謙なんて助けられなくしたかったのだろう。
それに、こいつは剣道部の主将と言うだけで割と怖がられてる謙と平気で初見で話していた。
「どうだ?俺の憶測は。」
「・・・」
彼女は何も答えない。その変わり、聞こえたのは元カノの声で
「ごめんね」
そう言った方向を振り向こうとするも遅く、俺の意識はそこで途絶えた。
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「・・・なんて、昔の話を思い出すな。」
俺の名は赤羽 成士 22歳。監禁され歴6年目突入した強者だ。目が悪くなり今はメガネをしている。
あの後、俺は頭を打ちつけられ気絶。そのままこのどこか分からない部屋まで送られてきたらしい。
毎日少しの時間、八舞が来て飯をくれる。その時に聞いた情報だが、
外の世界では俺は死んだことになってるらしい。事故死のようだ。そして、それにショックを受けた謙を立ち直らせたのが八舞らしい。それにより謙はこいつにベタ惚れして結婚したそうだ。今は出張中らしい。
本来なら俺は死んでいるのだが、彼女の気まぐれで生きていると言っていた。
だが、恐らくは彼女が俺を殺さないのは・・・。もし、彼女がその気持ちに気づいてしまったら・・・。1人の謙という男のために、俺の好きなところをノートに書いたり、俺の親父に襲わせたり、元カノ脅したり、ストーカーしたり出来るやつだ。何をしでかすか分からない。それなら・・・
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「成士さん、ご飯ですよ。」
もう成士は昔に比べて慣れたらしくご飯でも何にも言わないようになっていた。
今日はどんな風に遊ぼうかなんて考えていると、いつもと違う臭いが部屋から漂っていた。
(なにこれ・・・生臭い臭い?また血でも吐いたのかしら)
ドアを開けるとそこには
「ぁ、ぁ、アァァァァァァァ!!」
胸から血がたっぷりでた赤羽の死体と、彼の血で「Happy Birthday」と書かれていた。6年間も部屋にこもっていたのに、日光ではなく人口の光を浴びて生きていたのに、誕生日を覚えてくれていた。それも6年連続。
「あぁ、そうだったのね。」
てっきり、私は謙くんが好きなものだと思ってたけど、彼と居るうちに赤羽君に惹かれていって、本当は6年前のあの日殺すはずだったのに好きだから監禁して、
「あぁ、ぁぁ。」
大粒の涙が溢れ出る。それと同時に心が壊れていくのがよく分かる。
「私も・・・行かなきゃ。そっちへ。」
おぼつかない足取りで台所へ戻り、包丁を握りしめる。それを胸に当てて、
「成士君、待っててね。来世でも絶対会いに行くから。」
でも、その前にあることを思いつく。
「そうだ、せっかくなら謙君も一緒に行きましょうよ。いや、行かなきゃ可哀想よね。」
そう言って彼女は、家を出ていった。
「待っててね、成士君、謙君。みんなで一緒に行きましょう。」
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この6年間、舌を切って死のうと思っても死ねなかった俺は少しずつ持っていたメガネを胸に刺さるように尖らせていった。死ぬ日は誕生日と決めていたし、むしろそれ以外ありえなかったと言ってもいい。
刺した瞬間、いわゆる走馬灯というものなのだろうか。今までのことが思い出される。
「あの時、謙と一緒に買い食いして怒られて、あの時は妹と一緒に料理をして。あの時は初めて八舞に会って。」
あの事件以来流さなかったはずのものが今、目から垂れてくる。
「もし、どこかで違うようにしてたら、ハッピーエンドに行けたのかな。」
死に際にHappy Birthdayの文字を書いてみる。俺の誕生日って今日くらいだよな。違うかな?そういえばあいつとは2日違いだったよな。
「死にたく・・・ない・・・」
胸の傷に涙がしみて痛くなる。
やっぱり結論はただ1つなんだなと再確認する。どんな時も離れず、寄り添ってくれるのはたった1人。
「俺は俺が好きだ。」
〜完〜 バットエンド編
俺の事が好きなら好きなところあげてみろよ あおぶた @tatuta_tatuta
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