これが私の普通です

あきかん

異な自分

 トントコトン、トントコトン


 向かい風を感じる。

 感じると言っても僕には擬音としてしか認識できない。風はこんな音だ。


 キュルキュルタンタン、ポンポンポン


 歩いているとこんな音がした。なかなか軽快だ。思わずリズムに乗って歩きたくなる。


 モンモンバンバントットット


 友人に話しかけられた。僕には声が理解出来ないので唇を読む。

 「おはよう、皆藤。」

 クラスメイトはそう言ったらしい。


 「おはよう、琴梨。」


 僕は返答した。自分の声は認識できる。


 トカトカテン、トカトカテン


 これは何だろうか。初めて聞く音だ。


 カサカサ、ゴンゴン、ミンミンミン


 回りを見渡すと何か騒然としている。

 僕は琴梨の唇を読む。

 「榊誠也のゲリラライブだって!見に行こうよ。」

 あぁ、だから聞いた事のない音がしたのか。


 「そんな時間はない。学校に遅れるよ。」


 ゴーゴーダーダーバーバー


 どうやら琴梨が駄々を捏ねているらしい。

 「置いていくよ。」

 足早に学校へと向かった。




 僕に音楽はいらない。僕の世界は音楽で満たされているのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

これが私の普通です あきかん @Gomibako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る