雷人研究日誌

牛☆大権現

第1話

これは私、怨寺による雷人の研究日誌である。

一般に秘匿された存在の研究のため、参照可能な先行研究は非常に少なく、参考文献の多くを自身の研究より引用することを、許して頂きたい。


この研究が、後に続く者の助けとなることを期待する。


『雷人』


仮称学名をホモ・エレクトロニクス・エレクトロニクス

見た目は、ホモ・サピエンスとよく似た生物。

電気ウナギのように、筋肉による発電と電気の増幅を体内で行う事が可能。


遺伝子解析によると、その遺伝子構造はホモ・サピエンスと比較して5%以上の差異がみられる。(別紙・遺伝子解析比較ログ)


雷人の周りには常に強力な磁界が発生しており、機器を故障させるため、生体サンプルからデータを取る際には注意。

これは、雷人の骨が電磁石のコイルの役割を果たしている物と推測(証明実験の為、雷人の生体サンプルを入手したい)


「起源」


上記で行った遺伝子解析より

彼らの遺伝的ルーツは南アメリカの広鼻猿類、オマキザル科に近い種の派生と推測

ホモ・サピエンスは狭鼻猿類であるため、全く異なるルーツを持つ生物である


ホモ・サピエンスと似た形状を取っているのは、収斂進化の結果である、と結論される。

電気ウナギとウナギ、フクロネコとネコのように、類縁関係に無い種が似通った性質を持つ事があるのは、よく知られた事実だ(参考文献・https://ci.nii.ac.jp/naid/110007574599)


「性能」


推測される最大電圧は20億ボルト、 電流は50万A(別紙・雷人組織の発電実験参照のこと)

自然界の雷を、優に超える発電性能であり、これを耐えられる生物は、ほぼ存在しない


運動性能も、ホモ・サピエンスと比較して高いと思われる。


クラゲに電流を流したときに、三倍の速度で泳げると言う研究がある(参考文献・https://gizmodo.com/scientists-turned-a-normal-jellyfish-into-a-speedy-cybo-1841361450)

これを参考に、仮にホモ・サピエンスの3倍とした場合、秒速30mと推定される(追記・ホモ・サピエンスの実験体を手に入れた。発電能力を付与し、その運動能力を測定することで、雷人の性能の参考としたい)



「人類といつ出会ったのか?」


現時点では不明


しかし、古くからの神話に、雷人を元にしたと思わしき神格が存在することから、かなり古くまで遡ると推測される。

ギリシャ神話における雷神ゼウスなどは、その顕著な例と言える。


放電による発光から、太陽神等とも同一視されたと考えられる。(要調査)


過去の戦績


歩兵300人、戦車10輌、戦闘機5機、大砲20門。

ある島の戦闘に置いて、米軍が日本側雷人1匹に対して使用し、その全てを失った記録が残っている(参考文献・米軍保管「雷人戦闘記録」より)

その日本側の雷人は、米側雷人によって捕縛されたようだ。

全ての雷人が同様の成果を上げられる訳ではないだろうが、対雷人戦の一つの指標として、知っておくべき事例だ。


上記他、幾つかの事例を経て「雷人を殺害するのは、コストがあまりにも大きい」という合意が、国家の間に成立している。


裏でかわされた条約内項に

・雷人は集落にて所属国が管理

・雷人の存在は秘匿事項、また彼らの人権を認めない

・雷人を刺激しないよう、対雷人兵器の開発を禁止


などが存在する


また、各国はこの天然の生物兵器を、警察・軍に匹敵する抑止力、暴力装置として使用している。


「社会的なメリットとデメリット」


幾つかの企業帯が、雷人集落に対する援助等を行っているようだ。


かつて雷人は、コストが安く、強力な護衛として商売人を守ってきた歴史がある。

また現代に置いても、雷人の力を用いてしか抽出不可能なレアメタルなどが存在している。


早い話彼らの存在が、企業への利潤を産んでいるのだ。


一方でデメリットは、現代文明は彼らに対して脆弱であるという点にある。


彼らが近付いただけで、纏う磁気によりあらゆる機械は故障してしまう。

また、雷人の発生する高電圧に耐えられる変圧器は存在しない。


雷人がその気になりさえすれば、現代文明はその機能を瞬く間に失う事になる。

私は、それを恐れる。

(終)

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雷人研究日誌 牛☆大権現 @gyustar1997

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