第359話 魔法印
この旅娼婦団は、カレンザ一座と言うようだ。
団なのに座とはこれ如何に? まあ、謎かけでもないので軽く流したけどな。
娼婦は八人。野郎は七人。ナイチールのような雑用少女は二人。四十歳くらいの魔女崩れさん。この十八人で旅をしているそうだ。
「襲われたりしないの?」
「やられている間に毒を飲ませてやるよ」
カラカラと笑う娼婦のオネーサン。怖っ!
「でも、旅娼婦団が襲われるなんて滅多にないよ。あたしらは横の繋がりが強くてね、襲ったヤツに報復するんだよ」
なんの暴力集団だよ? 下手な犯罪組織よりエグいぞ。
「宗教の皮を被った暴力集団を創った元凶が一番エグいわよ」
ウェルヴィーア教は人に優しくをモットーに、世界に平和を築くために活動しております。あなたの祈り(魔力)を神に捧げましょう。
「これで皆様の病気は完治しました。なにか違和感のある方はいらっしゃいますか?」
健康なようでいてまったく健康じゃなかった。きっと長生きはできず、三十年も生きられたら御の字でしょうよ。
「いや、すっごく体が軽いよ」
「うん。肌なんて見違えるほどだよ」
「髪もパサパサじゃないし」
リン式お肌回復術は百歳のおばあちゃんでも十代のお肌にしちゃうんだからっ☆
「それはもう改造って言うのよ」
改造と書いてアンチエイジングと読む、的な?
「ついでなんで、男の方も治しちゃいますね」
まずは親方さんから治していき、御者さん、護衛さん、見習いは健康なのですっ飛ばし、最後に魔女崩れさんだ。
「あたしはいいよ」
「遠慮はご無用。と言うか、これは強制です」
ん? あれ? この魔女崩れさん、呪いみたいなものがかけられてるよ。
首に巻いたボロ布を無理矢理外すと、後ろ首に魔法陣、いや、焼き印がつけられていた。
「魔法教義会につけられたの?」
「……わかるのかい……?」
「こんなことできるのが魔法教義会の他にあるなら上に報告しなくちゃならないわ」
できるとしたらそれは邪神の使徒だ。だが、これはオレの回復魔法を弾いた。そんな面倒なことする能力を望むヤツがいるとは思えない。
面倒なことをやろうとするのは魔法教義会くらいなものだ。
>っと鑑定。
「魔力を外に出さないようにして、魔力を受けたら弾くとか、随分と高度な魔法陣──いや、魔法印かな?」
魔法教義会、なかなかおもしろい組織じゃない。オレのところにくるのも早かったし、各地に支部まで持っている。フフ。オレとしたことがいろいろ見落としているっぽいな。
「あなた、名前は? あ、偽名でも構わないよ」
名無しの魔女さんでは不便だからね。
「……マリンザ・エクスタナリアよ……」
「呪文みたいな名前ね。格好いいじゃない」
ちょっと声に出して超極大爆発魔法を放ってみたくなる。
「止めなさい」
いや、やらないよ。やるなら誰も見てないところでやるさ。恥ずかしいし。
「やるなって言ってんのよ! あんたは爆破魔か!」
ポンポン殴るなよ。痛くはないが、鬱陶しわ。
「ねぇ。ずっと気になっていたんだけど、その肩にいるの、なに? なにか生きてるような動きをしているんだけど……」
え? リリーが見えるの!? 阻害魔法で見えなくしてんのに?!
「おそらく、使徒の血でも引いているんじゃない。主の力を微かに感じるから」
使徒の血を引いている? やはり、オレらに与えられた能力は遺伝するのか!?
「すべてがすべて遺伝はしないわ。ただ、遺伝するときもある、ってだけよ」
そう言うことは早く言えや!
「訊かれてないし」
訊いたって答えねーことあんだろうがよ!
ちょっと面貸せや! と、手を伸ばすがヒョイヒョイ逃げる腐れ天使。いつか捕まえてその口に指突っ込んで綿を抜いてやっかんな!
「ねぇ、なんなのそれ?」
「あたしを監視する天使だよ」
「天使?」
「簡単に言えば神の使いだよ。わたしを監視しているの」
まあ、コピーに使っていることが多いけどね。
「な、何者なの、あんた?」
「巡回シスターだよ。それより、その焼き印、消すから」
使徒の血を引き、リリーが見えるだけの眼を持つ。こんな素材、捨てるなんてもったいない。オレが有効活用してやるよ。
後ろ首の印に手を触れ、マリンザにかけてある魔法を取り払ってやった。
ウェルヴィーア~邪神と戦えと異世界に放り込まれたオレ(♀)の苦労話をしようか タカハシあん @antakahasi
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