桜散る処で・・

のの(まゆたん@病持ちで返信等おくれます

桜・・

桜散る処で・・


学校の校庭 桜並木の中で


桜吹雪の中 私は 見つからない人を捜している


そう・・桜の花びらの降りしきる中に立ちつくす

少女は一人・・独り言を呟く


「お兄ちゃん 私ね 私・・お兄ちゃんが通っていた学校に

高校に入学したんだよ」


見上げれば、桜の花びらばかりが 舞い落ちてくる


ひら、ひら・・きれいな桜の花びらが少女の肩や頭にも

舞い落ちる


「もう少ししたら、お兄ちゃんの歳に追いついちゃう・・ね・・。」

1つ年上の私のおにいちゃん

1つしか 違わない


でも 大人びてて・・賢くて・・誰より優しくて・・

素敵な私のお兄ちゃん


遠くからの声に気が付いて 振りかえる


校庭の向こう側では 生徒達が サッカーをしている


「お兄ちゃんもサッカーが好きだったな

そして、桜も・・桜が大好きだった・・ふふ」


「ふふ・・ふ・・・。」

かすかな笑い声が 嗚咽に代わる


いなくなった兄の面影を思い出して・・

瞳には 涙が浮かぶ 涙がわずかに流れる

「お兄ちゃん・・・」


「お兄ちゃんが可愛がっていた 愛犬のサチは元気だよ

時々 お兄ちゃんをまだ 捜している・・。」


そして・・私も・・

小さな女の子がボールを追いかけて、道路に飛び出して

その子を助けようとして、トラックに跳ねられて・・そのまま


私が中学3年生・・お兄ちゃんが高校1年の冬の終わり

春まで、あと少しの季節だった


「もしかして? 真琴ちゃん?」

「え?」


慌てて 涙をぬぐい 振り返る そこにいたのは背の高い少年


「俺だよ!俺 君の兄さんの同級生 和利 毛利和利(もうりかずとし)!

幸坂 真琴ちゃんだよね


君の兄さんと友達で 時々 君の家に遊びに行ったよ 覚えてる?」



「あ・・はい・・」


そうだ、そういえばこの人 前に何度か遊びに来た事がある。


「桜・・彼も大好きだったね真琴ちゃんも?」

「はい・・でも・・今は・・」


「・・・」


「真琴ちゃんも この学校に入学したんだね

お兄さんが その真琴ちゃんのセーラー服姿を見たら きっと喜んだだろう・・」


「そう・・ですか?」


「もちろん、きっとだよ!」


「私・・この桜の中に立ってたら もしかしら 幻でも

お兄ちゃんに会える気がしたんです・・変ですよね」


「そんな事ないさ

きっと 遠くから見ているよ 真琴ちゃんとその桜を・・」

「そうですよね」


「そうさ・・」 彼は力強くうなずいた


「お兄さんは 君の笑顔が好きだよ 元気になったら笑えるようになる」


「そろそろ 休み時間は終わりだよ 真琴ちゃん

教室に行かないと」


「はい、そうですね 行きましょう」

 真琴は うなずいた


お兄ちゃんの同級生、友達の彼、毛利さんの後を追うように

校舎に向かう


そして 何度も振り返る降りしきる 桜の花びら・・

その中に 兄の幻が見えないかどうかを確かめる


ため息ひとつ あきらめて・・校舎へ駆け出す


・・・真琴・・・


少女には 聞こえない 小さな声がする

桜吹雪の中に 少年の幻が一人


少女を見送っていた


FIN

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

桜散る処で・・ のの(まゆたん@病持ちで返信等おくれます @nono1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画