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志帆はその日、一人でお姉ちゃんのお墓参りに行った。
そんなことを志帆がすることは初めてのことだったので、「ちょっとお墓まりに行ってくる」と志帆がいうと、お母さんもお父さんも、少しだけびっくりしていたようだった。
でも、志帆にはお姉ちゃんに会いたいという気持ちも(もちろん)あったのだけど、実はこの間お墓ですれ違った『あのお姉ちゃんに似ている人』と、もう一度会うことができないかな?と言う そんな下心があったのだった。
八月。夏休み。
そんなよこしまな気持ちを抱えて、志帆がお墓の前までやってくると、志帆の願い通りに、その人はその場所にいた。(その人の姿を見たとき、会いたいとは思っていたのだけど、まあ会えないかな? と思っていから、本当にすごい偶然だと思って、志帆は自分でも驚いた)
志帆のお姉ちゃんのお墓とお姉ちゃんに似ている人の家族のお墓は、少し離れている場所にあった。(最初に志帆は、その場所にその人がいるか確認をしに言ったのだ)
志帆はいつものように手慣れた手つきで、いつも通りに決まった動作をお姉ちゃんのお墓のところで行った。
その間、志帆はずっと、あのお姉ちゃんに似ている人のことだけを考えていた。(なんだかちょっとだけ緊張していきた。心臓がどきどきとしている)
志帆はお姉ちゃんのことがあまり好きではなかった。でもお姉ちゃんが亡くなって、本当は自分がお姉ちゃんのことが大好きだったのだと志帆は思い出すことができた。
「お姉ちゃん! 大好き!」
小さかったころの志帆は、本当におねえちゃんのことが大好きだった。大きくなった今の志帆も、……やっぱりお姉ちゃんのことが大好きだった。
「あれ?」
いつの間にか志帆は涙を流していた。
ぽろぽろとたくさんの涙をお姉ちゃんんおお墓をタオルで拭きながら、流していた。
泣くつもりなんてなかった。今まで一度もお姉ちゃんが死んでしまたことで泣いたことなんて志帆はなかった。だからすごく驚いた。
あのお姉ちゃんに似ている人のことを考えながら、いつの間にか、志帆は本当のお姉ちゃんのことを考えていた。お姉ちゃんとのたくさんの思い出を思い出して、志帆は自然と泣き出してしまった。(まるでお姉ちゃんを探して迷子になっていたときのような、あるいは、お姉ちゃんに守ってもらっていたあの小さな子殿ころの自分ように)
志帆は体の動きを止めて、ただ静かに声をなるべく出さないようにして、その場所で泣いた。まるでお母さんみたいと思った。(そう思ったら、少しだけ笑うことができた。よかった)
とても暑い日。太陽が青空の中に輝き、真っ白な入道雲があって、蝉がみーん、みーんととてもうるさく鳴いている。
……人の姿は、志帆の見える範囲の視界の中には誰もない。
そんな夏の世界の中に、志帆はいた。志帆は、たった一人だった。(だから、こうして、ようやくお姉ちゃんのことを思って、泣くことができたのだと思った)
あなたと手をつないで(旧) 雨世界 @amesekai
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