掃除をしたくない。

帳 華乃

 

 五畳かそこらの居住スペースでも、大して狭いとは思わなかった。多分この部屋が狭いのではなく、世界が広すぎるのだ。世の中には二十畳もあるリビングを携えたマンションが何棟もあるらしい。掃除をするのが大変そうだ。だがここで重大な見落としに気づく。掃除をしなければいいのだ。思い返せばこの部屋も五年は掃除していない。おぞましいことだ。あちこちに降り積もったホコリを見て見ぬふりをしてきたツケだろう。

 もういっそ掃除だの片付けだのをしなくても変わらないのではないだろうか。喘息もでないし、このままでも普通に生活できるのだ。それは引きこもり生活を始めてから現在までの月日が証明していた。そもそも、定期的に掃除をしてまで健康を維持したくない。長生きというものにあまり興味がない。母親はご長寿特集を好んで観ていたが、自分はそうでもなかった。むしろ退屈な気持ちになって、夕方のアニメをまだかまだかと待ちながら、寝転んで漫画などを読んでいた。幼い自分に「片付けをしなさい」と耳にタコができるほど言ってくれた母には申し訳無いが、掃除の習慣がつくことは今日日までなかった。多分これからもない。不甲斐ない自分を許してほしい。

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