転生勇者なる者と戦う大魔皇帝という魔族の皇帝の物語。
冒頭が敗走シーンで、そこから復讐するまでにじわじわと力を付けていく成り上がり物の定番なルートなんですが、
『魔族は体内に宿す魔力が大きい程肉体の成長が鈍り、その姿のまま固定されるため、見た目が若ければ若い程強大な力をその身に秘めている。』
という、主人公をショタにする為だけに考えられている設定が流石です。
影武者となる侍中もショタで、大魔皇帝が隠れ住む里の兄弟もショタ。
壮大なサーガの一つを書きながらも自分の好みだけは決して手放さない作者の拘りが見えます。
兄弟のうちの次男のユウシン君が一番好みなんですが、ユウシン君の設定画どこかにありませんかね…
勇者によって滅ぼされた魔族の国の皇帝が、王国再建のために奮闘する物語。
皇帝一族の勇者への復讐劇でもありますし、また魔族を討伐した勇者の作った王国のお話でもあります。総じて歴史群像劇の一部というか、大局的な視点から歴史を眺めるといった趣の作品で、とても一万字の短編とは思えない壮大さがありました。
紹介文によれば別の長編作品のスピンオフとのことで、なるほど大きな物語とのつながりを予感させる内容でありながら、でもあくまで単体の作品としてきっちり完結しているところが素敵です。
個人間の因縁であったり国家の興亡であったり、いろいろな側面から楽しめる物語なのですが、ちょっと本筋そのものからは離れた魅力として、魔族の種としての特徴(設定)が好きです。人と比べて長命であり、また実力に比例して成長速度が遅くなる、という生物的特性。人間である勇者との戦にあたって、必然的にその特性を踏まえた戦略を練るというのもあるけどでもそれ以前にみんな必然的に美少年という、ただ純粋に「YES」と強く頷くしかない設定。好きです。堪能させていただきました。