ある種の理想を描いた、夢溢れるイチャラブ物語

 共感能力や社会性といった面でいろいろ苦労するひとりの女性の、とある不思議な恋の物語。
 ズバリそのまんまタイトル通りの内容だったり、あるいは案外そうでもなかったりする感じのお話です。この「案外そうでもない」部分がいわゆるお話の肝で、詳しく語るとネタバレになるためここでは伏せますが、でもそれを踏まえた上でやっぱり理想の恋物語だったなと、趣味嗜好によってはそう読めてしまうところがとっても素敵なところです(そう読みました)。
 女性の一人称視点の物語なのですが、雅臣くん(主人公の交際相手)の魅力の描かれ方がとても好きです。彼のことを描写しているようでいて、いや実際に描写はされているのですが、でも彼のどこを見てどう思うかを描くことにより、彼以上に主人公自身のことを浮き彫りにしている。この迷彩というかカモフラージュというか、言うなら「顔のいい男につられて読んでいたらいつの間にか違うものにも詳しくなってた」みたいな、こういう読書感覚は個人的に大好物です。