エピローグ


 そして、おれ達の日常は戻った。


「コウちゃーん! 朝ご飯作ったの、食べてー」


「お! 愛姫の料理は初めてだな。いったいなにを作ったんだ?」


「えーっと、サバの青酸カリ煮込みに、ヒ素汁に、トリカブトのお浸しよー」


「そんなもん食えるか!」


「えー! 右手を怪我してる中、頑張って作ったのにー」


「アキ、安心する……。フランなんでも消化するから、フランならアキの料理全部食べられる……」


「わしも食べるぞ! なんせ、わしは100088歳の不老不死の天女じゃからな。毒物ごときじゃ死にゃせんわ!」


「100000歳って、閣下か!? ……って、ついツッコんじまったけど、不老不死の天女ってのがホントだったから、歳の話もホントなんだよな?」


「無論じゃ! 光一もようやくわしのことを理解してくれたようじゃの。これからは毎日崇めてもいいんじゃぞ」


「うーん、白塗りメイクをしてくれたら考えてやる」


「白塗りって、そりゃ閣下じゃろ!? ……くっ。まさか、わしがこんなツッコミをさせられる日がくるとはのう」


「つぅか、椿原ぁ! てめぇ、また旦那を殺そうとしたなぁ!? 今日という今日はただじゃおかねぇ!」


「なによー。邪魔するってんなら、容赦しないわよー」


「おいおい、虎徹も愛姫も朝から殺し合いみたいな喧嘩をおっ始めるなよな。……ダメだ、ふたりとも聞いちゃいねー。――お、小春。いつもは登校時間に屋敷に来るのに今朝は早いな」


「お、おはようございます。今日は、朝早くから来て、ぼ、ぼくも、千影先輩のために朝ご飯を、つ、作ってみました」


「おー、サンキューな! ……だが、朝からこのシャバシャバカレーは正直キツいぞ。なんつーか、駅のホームにぶちまけられてるのを連想しちまうし……」


「あ、あうぅ」


「あーっ! 光一くん! 小春ちゃんを泣かせたなー! そんなことする人には、わたしの特性チキンの赤ワイン煮あげないんだからねっ!」


「麗美、ずっと言おうと思ってたが、お前の料理も相変わらず、見た目が……つうか、ワインなんか使ったら小春が酔っ払いモードになっちまうだろ!」


「え? でも、料理に使ってるんだよ? アルコールだって飛んじゃってるし、さすがに大丈夫だよね? 小春ちゃ――」


「だいじょーぶれーっす!」


「ごめん、光一くんっ! 大丈夫じゃなかった!」


「まったく、なにやってんだよ! とりあえず虎徹! お前は戦ってないで、この麗美の料理を平らげろ!」


「了解! こんなの朝飯前だぜぇ!」


「朝飯前っつーか朝飯そのものだけどな。……次にフラン! お前は水を大量に持ってきて、小春にぶっかけるんだ!」


「持ってきた……。うわー」


「あっ! フランちゃんがこけて洗面器に入った大量の水を全部自分にぶちまけちゃったよっ!」


「ああ、バカ! フランが固形状態保てなくなってんじゃねーか! 麗美、とりあえず大量の塩をキッチンから持ってこい! スライムは塩かけたら水分抜けて固まるから!」


「えー、それは無理だよっ!」


「無理ってどういうことだよ?」


「だって塩っていったら体を清めるために使うもんだよ。少量ならともかく、それを大量なんて無理に決まってるじゃん。これ霊界の常識だよっ!」


「そんな常識知らねーっての!」


 もう食堂はてんやわんやの大騒ぎだった。


 そんな状況を見て、おれは思わず叫んでいた。


「お前らホントに残念すぎ!」

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残念ハーレムの作り方 笛希 真 @takesou

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