『鬼平犯科帳』池波正太郎著

清泉 四季

『鬼平犯科帳』池波正太郎著

 家の横手の路地から、ふらりとあらわれた人影が、

「おい、盗人ども」

 と、声をかけてよこした。

 として振り向いた盗賊どもへ、着流しの浪人姿の男がゆっくりと近づきながら、

「おれは盗賊改方の長谷川平蔵だ。もう、すっかり囲んであるから逃げられねえぜ」

                          (引き込み女より)


 鬼平犯科帳はドラマ化もマンガ化もされているので、聞いたことのある人は多いと思います。時代小説というと、ある程度年配の方が読むイメージですが、若い人にもぜひ、読んで欲しい!

 鬼平こと、盗賊改方の長谷川平蔵の盗賊を捕まえるまでの人間臭いやりとりが、たまらない!密偵、同心の一人一人の人物が魅力的で、仲間同士の連絡つなぎの密なやりとりの現場にまるで自分もその場にいるように引き込まれます。

 コロナ時代のリモートワーク、社会的距離では考えられないほどの濃密な人と人とのかかわりを感じられること請け合いです。

 これから世の中は他人との距離がどんどん遠くなっていくでしょう。確かにあった、思い切り密で人情味あふれ、体温の感じられる江戸時代を楽しんでみてはいかが。

 一話完結の短編が集まった超大作ですが、同心の木村忠吾、密偵のおまさ、五郎蔵、相模の彦十が活躍しだす中盤以降が特におすすめです。

 

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『鬼平犯科帳』池波正太郎著 清泉 四季 @ackjm

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