第4話 町の電気屋
大学3回生の冬に父親が倒れた。
病院に搬送されたが、父親はそのまま病院先で亡くなった。
死因は特発性心筋症だった。
本当に急な事で父親が亡くなった事は、誰も悪く無い。
ただ、一つだけ僕の中でずっと悶々としている事は父親の死に目にあえなかった事だ。
僕は、大学で教職免許を取得して中学校の教師になろうと考えていたが、父親が亡くなった日から僕の夢は変わった。
僕の家は祖父の時代から町の小さな電気屋だった。
その電気屋を父親が継いで、僕を大学まで通わせてくれた。
しかし、近年は大型の電気屋が数多くあり町の小さな電気屋は閑散としていた。
だから父親は、僕が高校生になると大学に行って教師になれとよく言っていた。
しかし、父親は閑散とした電気屋を何とかしてもう一度賑わせたいと言っていた。
父親は、自分の職場が大好きだった。
町の人達が家電を修理に持ってきたり、新しく買い替えたり、幼い頃によくゲームソフトを買いに来ていた少年達が大学への進学や地方への就職などで、新生活の家電を買いに来る事が父親は、嬉しかったみたいだ。
そういったお客さんが来店した時は、赤字になってでも青年達の新生活と将来を応援する気持ちで割引をしていた。
病院のベッドで覇気の無い色白い父親の顔を見た時に、父親の大好きだった場所、父親がもう一度電気屋に賑わいを取り戻そうとしたが、夢半ばで果たせなかった事を自分が成し遂げようと決意した。
それに、この電気屋は僕にとっても父親との思い出以外にもとても大切な場所だ。
僕には、親友が三人いる。
その親友達とよく新作のゲームが出ると店からこっそりと、僕の部屋に持って行きみんなで、ゲームをしていた。
直ぐに父親に見つかり怒られた。
中学の卒業前には、父親が高校に入ると集まれる時間が少なるから今を忘れないようにしなさいと言ってビデオカメラをくれた。
僕たちは、特別な事なんて何一つとしてしそのビデオカメラには、収めなかった。
他愛の無い日常をカメラに収めた。
僕は今、父親の夢も自分の夢も叶えられそうにない。
親友達は、同じ空の下にいるのだろうか。
夢を掴む事は出来たのだろうか。
二度と握れない青い春 橋本龍太郎 @HashimotoRyutaro
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