異世界転生して、俺達の世界の農業を広めようとした結果……

@HasumiChouji

異世界転生して、俺達の世界の農業を広めようとした結果……

 結局、俺は、裁判の結果、発狂したと見做され、俺の世界で言うなら「精神病院」にブチ込まれた。

 同じ部屋には先客が居た。

 俺と同じく二十はたち前の地球の日本からの転生者で……転生前は、高専の材料工学系の学生だったそうだ。

 そして、俺と似たような経緯で、ここにブチ込まれたらしい……。

 俺が、ここにブチ込まれるまでの経緯については……話は数日前に遡る……。


「まずは、事実だけを確認する。君は異世界からの転生者で、君の世界では『農業高校』なる農業の専門家を育成する学院の学徒だった。ここまでは間違い無いかね?」

 俺は事件を起こした後、近くの町に連行され、俺達の世界の警察官に相当するらしい役人から取調べを受ける事になった。

「はい」

「で、転生前の知識を活かして、この町の近郊の農村の農民に農業指導をやって生計を立てる事にした。これも間違いないかね?」

「ええ」

「そして、しばらくの間は、その村の農民とも良好な関係を築いていた」

「それも間違いないです」

「ところが、村の祭の日に、村長むらおさの家に招かれて、突然、怒り狂って暴れ出した。どう言う訳だね? 酒でも飲み過ぎたのか?」

「酒なんか飲んでません。俺達の世界では、俺の齢だと、まだ酒は飲めないので」

「では、何故、怒り狂って暴れたのかね?」

「村人が俺を馬鹿にしてた事が判ったからです」

「どうして、そう思ったのかね?」

村長むらおさの家の庭に、下手な農作物よりも、育てて維持するのが大変な植物が有ったからです。あんなモノを育てている以上、あの村の連中は、かなり高度な農業技術を持ってる。なのに……俺なんかに教えを乞うている理由は……多分、俺の事を陰で嘲笑う対象にする為だとしか思えません」

「その植物と言うのは、めずらしいモノかね?」

「いえ、この世界では、そこら中にも有ります。この牢獄の中庭にも」

 警官……すくなくとも、それに相当する役人はから、中庭を見た。

 しまった、何故、この事にも今まで気付かなかったんだ? この世界は、一見、俺達の世界のラノベでよく有る世界のように見えて……実は、かなり文明レベルは高い。

「ここの中庭には、目立つ植物など無いぞ。強いて言えば、芝生だけだが」

「まだ判らんのかぁ〜っ⁉ それともお前も俺を馬鹿にしてるのか〜っ⁉ それこそが問題の『育てて維持するのが大変な植物』だっ‼」

 俺の罪状には「役人に対する無礼で反抗的な態度」も加わった。

 そして、この薄暗くてカビ臭い部屋に居る。

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