「復讐猫」

低迷アクション

第1話

「私がって言うより、向こうが私を選んだんでしょうね」


新卒社会人“F子さん”は、よくあるペットとの出会いから、この話を始める。駅で、

やっていた捨て猫支援の団体から譲渡された“ギフ”は、黒と茶色の

アメショで少し目元がキツイ…でも、彼女にとって“好みの”雌猫だった。


いくつもの猫の中で、ギフは、こちらに歩み寄り、当然のようにF子さんの足元に寝そべった。まるで、自分を飼う事を知っているかの様だったと言う。

勿論、彼女も、そのつもりだったので、迷わず、自宅に連れて帰った。


同居している両親も昔、猫を飼っていた事があると言い、大いに歓迎した。


F子さん宅で、ギフは日中、外を歩き、餌や夜寝る時に家に帰ってくる“外猫”の生活を

送った。


譲渡団体の話では、ギフは元々、何処かで飼われていたらしく、その後、野良になり、団体に保護されたとの事だった。外で生活する事もあり、病院で去勢手術をしたが、お腹を開いた医師は、


「既に手術されています。恐らく、前の飼い主でしょう。加えて言えば、この猫ちゃんは

一度出産もしています」


と告げた。ギフは人間で言えば、お婆ちゃんだったが、元気で、体格も大柄、他の猫との喧嘩したり、蛇や蛙を咥えてきては、母に怒られていた。


また、自身を家に連れてきたF子さんによくなつき、彼女が仕事から帰ると出迎えたり、

外では、仔犬くらいの体を力一杯、彼女の足に擦りつけ、喉を鳴らした。


F子さんとしては、小学校の頃に近所で流行った野良猫を殺す変質者の事件などを思い出し、外で飼うのは、あまり気が進まなかったが、問題はなく、2年の時が過ぎた。


ギフがいる生活は当たり前になり、例えば、家族の話題で、お隣の長男が仕事を辞め、15年ぶりに実家に戻ってきたと言う話題と同じように、


「最近、ギフの夜のお散歩が増えた」


と言った話が交わされるまでになる。



そして、隣家の長男が酔っぱらって帰宅途中、土手から足を滑らせ、亡くなった時を同じくして、ギフはF子さんの家から姿を消した。


別に、これらの話に関連があるとは思わない。確かに目撃者によると、事故直前、長男は

足元に何かぶつかったような感じで身をよろけさせ、落ちたとの事だが、酔っ払いなら、

ありそうな話である。


F子さんが幼い頃に起きた猫殺しには子猫が多く含まれていたが、それと長男、ギフとの関係性だってわからない。


しかし、F子さんは最後にこう締めくくる。


「猫は執念深い…」と…(終)

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「復讐猫」 低迷アクション @0516001a

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