勇者の育て親である御年212歳の大魔女アニエスは魔王との最後の戦いで勇者を庇い、その長き旅路を終えるのだった。
と実は終わっていなかったアニエスは今際の際に転生の魔法を唱えていたのです。
何者かに転生されたのではなく、自らの意志で転生したアニエスでしたが転生先は病弱な3歳の幼女。
意のままにならぬ体に四苦八苦しながらも必死に生き抜こうとする姿が描かれているのがこの物語なのです。
というあらすじだけだと涙を誘うお話のようですが違います。
見た目は幼女、されど中身と言葉遣いはおばば。
ここが重要です。
シリアスな場面もどことなくコミカルに見えてしまう「のじゃ」が炸裂するのです。
成長するにしたがって、暴走していくおばばの活躍は一見の価値ありです!
使い古されたネタみたいなタイトルとは裏腹に、読み疲れない適度な地の文で情景を想起させてくれて、地に足が着いた登場人物と生活感がとても心地良い。
しっかり地歩を固めて堅実に進む話の流れ(及び主人公)でありながらも、周囲の思惑や行動で物語は無理なく加速していき引き込まれる。
伏線も周到に敷設・回収されながら進むので、展開に行き当たりばったり感が無く、純粋に続きが楽しみになります。
主人公は最強の一角でありながらも身体的・立場的にかなりの制限が掛かっており、起きる事件の性質も相まって、なんでもかんでも無双して解決という訳には行かず、その分追い込まれて爆発した時にはかなりスッキリさせてくれます。
こういう「溜め」を読者に鬱屈ではなく期待として読ませてくれる構成力が素晴らしい。
生活感のある話が好き、でもまったりし過ぎて波乱や起伏が無いのもちょっと......な人には、是非とも読んで頂きたくお薦めする作品であります。