タイトルで損しまくってる作品

 使い古されたネタみたいなタイトルとは裏腹に、読み疲れない適度な地の文で情景を想起させてくれて、地に足が着いた登場人物と生活感がとても心地良い。
 
 しっかり地歩を固めて堅実に進む話の流れ(及び主人公)でありながらも、周囲の思惑や行動で物語は無理なく加速していき引き込まれる。
 伏線も周到に敷設・回収されながら進むので、展開に行き当たりばったり感が無く、純粋に続きが楽しみになります。

 主人公は最強の一角でありながらも身体的・立場的にかなりの制限が掛かっており、起きる事件の性質も相まって、なんでもかんでも無双して解決という訳には行かず、その分追い込まれて爆発した時にはかなりスッキリさせてくれます。
 こういう「溜め」を読者に鬱屈ではなく期待として読ませてくれる構成力が素晴らしい。
 
 生活感のある話が好き、でもまったりし過ぎて波乱や起伏が無いのもちょっと......な人には、是非とも読んで頂きたくお薦めする作品であります。