第6話
『ヒゔああああああああああ』
その日の断末魔は一際耳障りだった。しかし耳障りであればあるほどそれを黙らせる快感はひとしおだ。気付かぬうちに興奮で手が震えていた。息も荒くなる。いよいよだ、いくぞいくぞいくぞ。
ズブン
重い手応えと吹き出す汁、溢れる笑顔に、突き刺すような沈黙。
隆志はゆるゆると立ち上がると顔についた液体を腕で拭った。さて早くこれを切り刻んで鍋で煮てしまわないと。時間をかけて煮込めばきっと美味しくなるぞ。
ガチャリとその時部屋のドアが開いた。いつも野菜が静かになると入ってくる母親と目が合い、瞬間その目が恐怖と嫌悪に染まるのが分かった。
『きゃああああああああああああ』
おかしいな。そこはありがとうだろ。感謝してくれないと困るんだけどな。誰のためにやってると思ってるんだ。毎日毎日毎日包丁握って毎日毎日毎日毎日。煩いの切って。切って切って切ってダンダンダンダン切って切って。黙れ黙れ黙れ。誰のために切って切って切って黙らせたと。煩いのは切って。煩い。
すっかり静かにした部屋で隆志は立ち尽くしていた。おかしい。耳の奥が煩い。どうやら今まで聞いてきた断末魔がこびりついてしまったようだ。煩いならどうしたらいいのかすっかり隆志には分かっていた。にんじん、とまと、らでいっしゅ、ぴーまん、たまねぎ、ぱぷりか、じゃがいも、なすび、さつまいも、だいこん、おとうさん、おかあさん、そしてたかし。きょうのめにゅーはやさいいっぱいかれーらいす!
今日のメニューは野菜いっぱいカレーライス! きゅうた @kan90
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