第5話
それからは野菜が叫び出すのが待ち遠しかった。悲痛な叫び声をあげる体に非情に刃を振り下ろして沈黙させる優越感。ストレスも不安も消え失せ、母親にも優しくできた。次はどの野菜がどんな声でがなり立てるのか、楽しみにすらなっていた。野菜と立ち位置が逆になったみたいに感じた。
早く聞きたい。もっと聞きたい。もっともっともっと俺に恐怖して、俺に黙らされたらいい。
そうか、と隆志は思った。これは自分の為の叫び声だったんだ、つまりこれは、俺に向けられた断末魔。
にったり笑って隆志は包丁を振るう。小気味よい規則正しい音が台所で踊り、それに鼻歌が混じった。
今日のメニューは野菜たっぷりカレーライスだ!
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