(四)‐終
俺と水上咲良は店を出て、駅へ歩いていった。そして横断歩道の赤信号で立ち止まった。
そのとき、彼女は「ちょっと酔っちゃった」と言って、俺に背中から体をもたれかけてきた。
駅から近いので、人通りが多かったまっすぐ帰宅する人、仲間と肩を組みながら酔って帰る人などが周囲にやってきた。
「ごめんね」
「いや別に。送っていくか?」
「ううん、いいの」
彼女はそう言うと、俺の方を向いた。そして俺の胸に顔を押し付けてきた。さらに彼女は、俺の顔を見た。顔を少し上げ、目線を上に向けて、俺の目をまっすぐ見つめてきた。そうして、彼女は言った。
「その代わり、お願いがあるの……」
横断歩道の信号が青になった。しかし俺は彼女の目を見たまま、動けなかった。
大勢の帰宅人が横断歩道を渡り駅へと向かっていった。
そして横断歩道の信号が再び赤に変わった。
(了)
信号の色 筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36 @HarunaTsukushi
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