(三)‐3
「俺、その時レギュラーじゃなかったんだ。だからそう言ったんだけど、君は『でもチームのために応援するんでしょ。だったら私はあなたがチームのために応援するのを応援するわ』って言ってくれたんだ。それがすごく嬉しくて。そんな考え方をする人がいるんだって。それ以来、君のことばかりを思っていたよ。実はそのおかげで、受験では第一志望の高校に落ちたんだよ」
「そうだったんだ。でも私、そんなこと、言ったっけ?『応援するのを応援』なんて」
「言ったよ。一言一句同じとは言えないけど、同じようなことを言ってた」
「そっか。私も覚えていないそんなこと、覚えていてくれたんだ」
「子どもの頃の恋なんてそんなもんだよ」
「そうよね。子どもの頃は、恋するのもピュアだったよね。大きくなったら『相手の年収がー』とか『どこの大学出ているー』とか、不純な動機で恋を選んだりするようになっちゃっうよね」
「君も、そうなのか?」
「そういうつもりはなかったけど……。でも、夫が父の部下だったというのと、官僚だったから生活は安定していると思って、まあいいか、ってなって。あなたはどうなの?」
「おかげさまで奥さんと子ども一人に恵まれたよ」
「そっか」
その後、俺たちは店を出た。
(続く)
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