(三)‐2

「ねえ、一つ聞いていい?」

「何?」

「あのとき、私に告白してくれたよね」

「ああ、卒業式の日……」

「うれしかった。引っ越しするんじゃなければ、私、お付き合いしていたかもしれないわ」

「そうだったの?!」

 俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

「そうよ。あのクラスには鷹野君と仲のいい女子だっていたじゃない。萩山さんだっけ? ソフト部の」

「それは新津亜紀だな。ガサツなヤツ。萩山はバレー部の背の高いヤツだよ」

「あー、そういえば、そうそう思い出した。そうね、そうだったわね。懐かしいなあ……。それにしても、なんで私だったの?」

「そりゃあ、好きだったからに決まってるじゃないか」

「それはわかるわよ。好きじゃない人に告白なんてしないわ。でもどうして? 他の人じゃなくて私だったの? やっぱり容姿?」

 俺はコップに三分の二ほど入っていた焼酎を全部飲んだ。

「……大会の前の日に『頑張って』って言ってくれたじゃん。それが嬉しくって」

「そんなこと言ったっけ? 多分私、いろんな人に同じこと言ってたはずだから……」


(続く)

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