(三)

 新津はこうなることを予想していたのだろうか。新津と会った二日後に水上咲良から連絡があった。再び会いたいというのだ。

 連絡が来るとしてももっと先だと思っていたのだが、俺の予想は外れた。

 そしてその連絡が来た翌日に、再び居酒屋で会った。

「そっか。じゃあ、小平に金を借りたっていう話は、その夜間の専門学校の入学金を払うためか」

「そう。WEBデザイナーなら正社員の口もありそうだから。昼は派遣で働いて夜は学校に通おうと思って。結婚する時に仕事辞めるんじゃなかったって後悔してる」

 そう言って彼女は笑顔を見せた。

「まあ、辞めたのは仕方ないさ。でも今、君は前向きに生きてる。未来も悪いことばかりじゃなさそうだし。良かったよ」

 正直、俺はほっとした。前回会ったときは、ほとんど笑顔を見せてくれなかったからだ。この子が男子から人気があったのは、彼女がいつも見せていた笑顔の力もあったのかもしれない。


(続く)

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