首狩り様
日向池 春風
第1話
これは、俺と今はいない弟が体験した話だ
俺は小学生の頃、夏休みに弟と二人でバスに乗って祖父母の家に行ってたんだ。最後に行ったのは俺が五年生、弟が二年生の頃だったかな...。
俺と弟は祖父母の家に行ったら大体、川で泳いだり田んぼで遊んでたりした。家の裏に山があったんだがな、爺ちゃんから
「あそこには絶対に行ったらいけん。」
って言われてたから行けなかったんだ。でも、小学生だったからダメと言われたら行きたくなるんだよね。だから爺ちゃんに内緒で行っちゃったんだ。あの時、行かなければよかったと思う。
山では虫捕まえたり、獣道走ったりしてた。しばらくしてさ、弟が
「にいちゃん、あれ何?」
って聞いてきたんだ。なんだろって思って見てみたら、そこには慰霊碑みたいな塔が建ってたんだ。
「なんだこの塔?お墓とかじゃね?」
って言いながら近づいて見たら、武士の人?の名前が書かれてたんだよ(名字 ミドルネーム 名前って感じだったから武士の人だと思った)。
その周りぐるぐる回って見てたんだけど、それ以外何も見つからなかったからさ、帰ろうとしたんだよ。そしたら弟が
「にいちゃん、あそこに誰か立ってるよ」
って塔の奥の方を指差して言ったんだよ。その方向見たんだけどさ、誰もいないんだよ。
「お前、驚かそうとしても無駄だぞ」
って言ったんだけどさ、
「いるじゃん!ほら!あそこ!」
って言ってくるから
「わかったわかった」
って言って腕引っ張って帰ったんよ。
夕飯の時に、弟が
「裏山に行っちゃいかん」って話忘れてさ
「今日ね!裏の山に行ってきたの!」
って言っちゃったんだよ。そりゃ爺ちゃんキレるわな。と言っても優しくキレた。
「お前ら山行ったんか?」って優しい口調だったけど声低くしてたから怖かった。
「うん!なんかね、おっきい塔があってその下に黒い服着て長い棒持ってたおっちゃんがいた!」
って楽しそうに弟が言ったんだよ。そしたら爺ちゃんと台所で飯の準備してた婆ちゃんが急に固まったんだ。そんで、すぐに爺ちゃんが鬼の形相でキレたんだよ。
「お前見たんか!?その塔も!おっさんも!?」
って 弟びっくりしてさ、泣き出したんだよ。そんで、爺ちゃんが俺にも聞いたんだ。
「お前見たか!?塔とおっさん見たか!?」
って言われたから「と、塔だけ見た」言ったんよ。
婆ちゃんはどっかに電話かけて、爺ちゃんは急いで軽トラの鍵持ってきて俺ら引っ張って行ったんだ。
そんで軽トラの後ろに乗せられて、どっかに連れてかれたんだわ。
着いたのは寺だった。寺には、坊さんと巫女さんがいて、弟は寺の側にある蔵に 俺は寺の中に入れられたんだわ。そんでお祓い受けたよ。俺は早く終わったんだけど、弟は長かった。終わって帰ってきた時は涙で目が真っ赤になってたよ。
坊さんに
「弟君のお祓いは成功した。でも、完璧じゃないから...」って言われた。
その時なんとなくわかったよ。
「あぁ 多分弟死ぬんだろな」って。
「それで目真っ赤になるまで弟泣いてたんだろな」って。
弟が見たものが気になったから坊さんに聞いたんだよ。坊さんはぽつりぽつりと言い始めた
「昔、この地域に村があったんだ。ある時、村に落ち武者が一人来たんだよ。村人達は落ち武者に殺されるんじゃないかと思って怖がってたんだけどさ、意外にも落ち武者は村人達を手伝ったりして大人しかったんだ。そんな時、村に一人の若い武士が来たんだよ。
「ここに落ち武者いないか?庇ってたら殺すぞ」
って言われたんだ。だから村人達は落ち武者を殺したんだよ。毒を使って動きを弱らせて首をはねた。その後、村では不可解な死がたくさん起こったんだ。殺された人みんな首を切り落とされて、落ち武者が首を切り落とされたところに捨てられてたんだ。村人達は
「落ち武者の祟りじゃ 落ち武者がワシらを皆殺しにするんじゃ」
って怯えてたんだって。だから、隣村から神社の神主さん呼んでお祓いしてもらったんだけど、効果は無し 日に日に死ぬ人が増えていったんだって。そんな時、修行のために近くの村に来てた高僧が噂を聞きつけて村に来てくれたんだって。それでお祓いして大丈夫 って思われたけどダメだった。力は弱まったんだけど、落ち武者を見たものが死ぬっていうことが起きてしまってね。それで、首が狩られたように死ぬから「首狩り様」と呼ばれるようになった。それが今に至るって感じなんだ。」
俺と弟は寺で一夜を過ごした。そんで朝、親父が迎えに来てな、それで帰ったんだ。
それ以来、祖父母の家には行ってない。
弟は数日後に死んだよ。首には刃物で切られたような痣があった
これで終わり 俺は今高校生だがあの時のことは鮮明に覚えてるよ。
あの時に戻れたらなぁ
首狩り様 日向池 春風 @wareharukaze
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます