第2話 親子丼セット

美月は月に一度、最寄り駅から数駅の美容室で髪を切っている。ショートボブ、この長さが気に入ってここ数年は同じ髪型にしている。


「すっきりした!」


美容室を出て、時計をみると12時少し前だった。


「この前行ったお店よかったな。」


美月は先日行った韓国料理屋を思い出していた。人見知りする美月はもっぱらチェーン店で昼を済ませることが多いのだが、なんだか近頃は人の温もりが嬉しかった。

仕事をやめて会話する機会が減ったせいだろうか?

美月はぶつぶつ考えながら今日も新しい店に入ってみようと思った。


駅前の通りをしばらく歩くとおいしそうな天丼と蕎麦のセットのメニューが目に入った。


「蕎麦もいいな。親子丼やカツ丼もあるんだ。昔ながらのお店って雰囲気でいいな。今日はここにしてみよう。」


ガラッ


12時前だが蕎麦屋は既に忙しそうだった。

女性店員はようやく美月に気が付くと好きな席に座るように促した。


「いらっしゃい。決まったら声かけて。」


水を持ってきたベテランらしき店員にラフに声をかけられた。


ちょっとびっくりしたが、気を取り直してメニューをみた美月は親子丼と冷たい蕎麦のセットを注文した。しばらくすると運ばれてきたそれにはポテトサラダの小鉢がついていた。いい味だ。濃いめの味付けに美月は嬉しくなった。


美月は夢中で食べた。

ふう、と一息つくと


「蕎麦湯ね、お待ちください」


と女性店員から絶妙なタイミングで声をかけられ驚いていると、その店員はさらに奥の女性店員に向かって「すみません、蕎麦湯を1つお願いします!」と声をかけていた。

ほどなくして蕎麦湯がやってきて美月は蕎麦つゆにとろんとした蕎麦湯とわさびを追加しておいしそうにそれを飲み干した。


ふー


のんびりした美月のテンポとは少し違うが人の温もりを感じて美月の心は少し明るくなった。


「よし、もう一頑張り」


満腹になった美月は蕎麦屋をあとにした。









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