神様なんて存在しない

仲仁へび(旧:離久)

01



 私は神の実在を信じない。


 絶対の正義と善であり、人間の悪行も善行も見つめている全能の存在。

 困難と苦難を与えるものの、それを乗り越えた者には、慈悲と慈愛を与え、人々を助けている。


 本当ならばなんてすばらしい。

 きっと、いるのなら多くの人が幸せになっているだろう。


 けれど、私は思う。

 神様なんて存在しない。


 世界では多くの人が不幸になっているし、死ななくていい人が死に続けている。


 努力すれば夢がかなう、報われる?

 嘘だ。

 諦めなければ道が開ける。何とかなる?

 冗談でしょ。


 本当に信じてるの?


 そんなのたったのごく一部でしかないよ。


 表に出ている成功者の言葉は、みんな戯言。


 その下に、何千・何万もの人達がいて。努力しても、諦めなかったとしても悲惨な目に遭っている人間がいるのに。


 本当に神様がいるなら、必要な努力をした人には、それに見合う幸せを与えてくれるはずでしょ。

 でも、そうじゃない。


 世界のどこかには、今も理不尽に奪われる幸せがあって。

 誰かが失敗して、行き止まりに行き当たって、ひきかえせなくなって、希望を失って、諦めている。


 だから私は、神様なんて存在みとめない。


 もし仮にもそんな存在がいて、私達に手を差し伸べていないよりは、最初からいなかった方が救いがまだあるじゃない。


 逆説的に、こんな世界に神様さえいれば、私達でも救われるかもしれない、ってまだそう思えるんだから。


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