さあ自分で考えよう。

小石原淳

自分で考えるのが大事

 インターネットが当たり前の世の中になって以降、日常は情報過多に陥り取捨選択に迷うだけでなく、何が本当で何が嘘なのか、判断しづらくなっていると感じませんか。

 重ねて今年は新型コロナが不本意ながら流行したおかげで、事態に拍車が掛かった。偽りのコロナ対策が広まったり、逆に有効な手段がなぜか否定されたり。怖いのは、そこに悪意が存在しなくても嘘が広まるケースが多々あること。情報の中身をよく調べない内に、善意から早く知らせようとして拡散し、誤情報が広まってしまう。

 そういった現代に何が必要かを考えてみると、まさしく「自分で考えること」なのでは。情報をそのまま受け取るのではなく、わずかでもいいから自分で考えて、必要ならば検索し、辞書や図鑑をひもといてみて、自分なりに咀嚼して初めて意味のある情報と言えるのかもしれません。


 考えると言えば、パズル・クイズ・なぞなぞです。

 昔、「クイズ世界はSHOW by ショーバイ」というテレビ番組がありました。逸見政孝、山城新伍、ジャイアント馬場、高田純次等、当時のそうそうたる面々が出演した人気コンテンツで、いくつか流行語も生まれました。

 その一つが「さあ~みんなで考えよう!」というフレーズ。司会を務める逸見政孝が出題のあと、シンキングタイムに入るかけ声として放っていたものです。

 翻って今の時代。自分で自分に声を掛けるのもいいんじゃないですか。「さあ自分で考えよう」って。


 そう言われても普段からいちいち考えて頭使ってたら疲れちゃうし、面倒だよという向きに、パズルの本で考えることに慣れるのはいかかでしょう? たくさんある中から、『脳力パズル』(芦ヶ原伸之 PHP研究所)をおすすめします。

 お亡くなりになっていますが著者の芦ヶ原氏は往時、世界三大パズルコレクターと言われ、またパズルやなぞなぞ(希に知識を問うクイズも)の優れた創案者としても知られる、まさにパズル界の巨人でした。問題の傾向はかつてのベストセラー&ロングセラー「頭の体操」シリーズ(多湖輝 光文社)に近いですが、随所にエッセイが出て来るのが本書の特長で、パズルのエッセンスが詰まっています。個人的には小説、特にミステリのアイディアを考えるときの種本として芦ヶ原氏の著書を重用しており、創作意欲を刺激してくれる大変ありがたいものです。

 このパズル界の巨人を知らなかったという読者各位は、今回紹介の一冊を入り口に、芦ヶ原伸之ワールドにのめり込んでみるのも一興かと。

 もちろんどうするかの判断は、“自分で考えよう”。

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さあ自分で考えよう。 小石原淳 @koIshiara-Jun

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