第1話

どうして僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだ…


 今日は第一志望の県立高校の合学発表の日である。

 田中大輝はこの学校に入る為に遊ぶ時間を無くして塾に行き帰宅してから食べる夕飯は味わう事をせず腹を満たし脳に栄養を行き渡らせる行為にしか考えておらず、唯一の家族である八歳上の兄祐樹がホストの仕事に行く前に受験生である大樹の健康を思って作ってくれているなど考える事も無い、それどころか余計な事に容量を使うなら公式を覚えるのに使った方がましだとさえ思っている。


 そう思うのも致し方ない。


 中学一年生が終わり二年生に上がる桜が散り始める季節に大樹の両親の智美とすぐるはショッピングセンターからの買い物帰りに居眠り運転で車線をはみ出したトラックとの正面衝突の事故が起き両親乗っていた乗用車はフロント部分は大破しエンジンから煙が登る程の大事故で二人は車体に押し潰され内臓破裂で亡くなってしまった。

 

 両親の告別式が終わり両親の家族の叔父叔母達八人と親族会議が自宅で行われた。ニ年前に優が4LDK駐車場庭付き一戸建てを貯金していた二千万を頭金に二十年ローンで買った立派な自宅だ。朝食と夕飯は出来るだけ毎日家族と食べる田中家のリビングは明るい笑い声と楽しい会話でいつも温かい空気が流れていたが、今日は冷たい悲しく険悪な空気が流れている。

 

 初っ端から智美の妹の明美が大樹を引き取ると言い出し祐樹が反発した。父の弟の護は『我々が大樹を引き取るのが普通だ』と、母の兄も『なら家で大樹を引き取ります』と、険悪な雰囲気だったが大樹は『兄と離れるのは嫌だ』と言うと明美はバン!とテーブルを叩いた。


『またその顔に奪われるのは許せない!』と叫んだ。祐樹と大樹の二人は意味が分からない言葉だが、叔父叔母違っていた。『まだそんな事言うのか!』と、叔父の悟が怒り出した。


 収拾がつかない話し合いが一時間続き祐樹が『俺が大樹を育てる!誰の援助も受けないし、家のローンも俺が払う!だから俺達に構わないでくれ!』と、怒り狂う明美を悟が羽交い締めにしながら『分かった。しかし、俺も護もお前達を大切に思っている事は信じて欲しい。だから、何かあったら直ぐに頼ってくれ、お前達二人は俺達兄弟の忘れ形見で息子同然なんだからな』と、言う言葉に祐樹は涙が溢れだした。


 親代わりになり教師を目指し通っていた大学を辞めてホストとして働き出した。どちらかと言うと話下手の兄が務まるのかと大樹は思っていたが自分の為に頑張ってくれているのだと気付き、兄のなりたかった教師を目指す事にした。

 

 そして、担任の先生と相談をして修学支援新制度の対象校になっていて給付奨学金と授業料減免を受けれる埼玉県内の学校を探した。そして、希望している大学附属高校で通学が一時間以内の学校が一校該当した。しかし、偏差値が68で普通を絵に描いたような偏差値45の大樹の学力では無理難題であった、だから遊ぶ時間を無くして勉強に集中していたのだ。


 努力が功を成して大樹は志望校に合格したが、そこから地獄の日々が続いたのだった。


 二人は明美の存在を軽視していた…。明美の娘である優子は小さい頃から洗脳されていた。本当は誰の子供が分からないのに優が父親だか、優子って名付けたのよ。


 祐樹がいるから離婚してくれなくて結婚出来なかったからあの二人が憎い。優はいつも来てくれて愛してくれるのに結婚出来ないなんてと、優子に吹き込んでいたのだ。


 なのでなこの学校に入学してくるとしり優子はある計画を立てていた。

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キャストゲーム いちとご @ripoff

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