2 おにぎりのお弁当
おにぎりのお弁当
「では、いただきます」そう言って、ボアは自分で手作りしてきたお弁当をお昼の時間に食べ始めた。
「うん。美味しい!」自画自賛ということになってしまうけど、おにぎりは確かにすごく美味しかった。鮭とおかかと梅干しの入った、三種類の三角形ではなくて、俵型をしたおにぎりだった。
おにぎりの隣にはたこさんのウインナーと卵焼きが入っている。それとポテトサラダ。その全部が、全部、ボアの手作りの料理だった。
ボアは料理が好きで、音楽の勉強の合間には、趣味の料理をよくしていた。(パンをやりたり、ケーキを焼いたり、あと少し手間のかかる料理をしてみたりした)ボアは自分の料理の腕にとても自信があったのだけど、今のところ、そんなボアの料理を「うん。美味しい!」と言って食べてくれる人はお母さん以外に誰もいなかった。
ボアは学校で、また教室の中で孤立していた。
いじめられてた、というわけではないのだけど日本人とフランス人という人種の違いと、それからボアの美しい容姿と、そしてなによりもその彼女自身の音楽の才能によって、ボアとほかの生徒たちの間には、見えない壁のようなものができてしまっていたのだった。
だからボアはいつも一人だった。
今もボアは、学校の中庭にある噴水の前のベンチに座って、黙々と一人でお弁当を食べていた。
……悲しくなんかない。絶対に友達だって作れる。みんなと仲良くなれる。
ボアはそう思って、毎日学校に登校していた。
でもときどき、悲しくて泣いてしまいそうになるときもあった。ちょうど、今、涙を必死で我慢している、孤独な午後の食事の時間のときのように……。
「一人でお弁当食べているの?」
「え?」
そんなボアに声をかけてくれる人がいた。
びっくりして、思わず少しむせてしまったボアが、息を整えながら声がした後ろを振り向くと、そこには深見緑がいた。
緑はにっこりと笑って、楽しそうに驚いて目を丸くしているボアのことをじっと見つめていた。緑はその手に購買で買ったと思われるお昼ご飯のパンを持っていた。(焼きそばパンと、卵サンドだった)
廊下を走って怒られる 雨世界 @amesekai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。廊下を走って怒られるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます