読む上で、まず心得ておく点は主人公の魅力の無さ。
感情的で、想像力が無く、やたら強い単語が頻発し、罵倒が多く、学習せず、言葉はその場の気分を垂れるだけ。
最初に読んだときは、そっと戻りました。
ただ他の方のレビューを見て、もうちょっと読み進めてみました。
星の生物に知性が生えると、彼ら視点の流れがちょこちょこ出てきます。
それを追っていくと結構おもしろい。
歴史の縮図というか、一人の生物視点からでは様々な出来事であれ、巨視的に見ると最初の最初から分かってる理屈にそのままハマっていく。
そうなるだろうな。
そんな納得できてしまう変遷をたどる歴史をみると、運命が個人ではなく歴史に使う言葉だと思えてきてしまう
突如として宇宙空間に放り出された主人公・石田が、謎のナビゲーターに導かれ、神様として新しい惑星を創造して、そこで生まれた生命たちが築きあげていく惑星史が興味深いです。
天地を創造し、海の中から原始生命体が発生し、生命は進化し海から陸へと上がり、星は命で満ちていく。生命の進化を促すきっかけは、まさに神様である石田のさじ加減ひとつ。外敵が多かったり、食べ物がなかったり、環境が厳しいと絶滅してしまうが、安定した環境も進化を停滞させてしまう。遺伝子を組み替えたり、棲家を移したり、数億年もの歳月をかけた試行錯誤の末、ついに知性が芽生えた新人類を誕生させた石田の感動もひとしお。
しかし新人類たちは後先を考えずに自滅しかけたり、旧種族を全滅させようとしたり、ついには同族で争いを始めたりと自分勝手な行動ばかり。それが生物に備わった自然淘汰の本能だとしても、手間暇をかけて生み出した生物が不毛な争いばかりしているのでは、石田でなくてもガッカリしてしまうだろう。
現実世界の神様も今の私たちを見て失望しているのかもしれない。石田の手を離れ、文明を築き始めた人類がどんな歴史を紡いでいくのか注視したい。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)