自然と共に

碧海雨優(あおみふらう)

私の自然

 森へ入る。

 

 おっかなびっくり泣きながら進むと、木々の囁きや歓喜の音が聞こえる。


 花が咲き誇って、私を歓迎してくれた。

 上から舞い降りる花びらのシャワーに、私は機嫌が良くなり、力一杯新しい緑の香りを胸に仕舞い込む。



 その道をすらすら歩いていくと、どんどん日差しが照り返る。


 だが、木々は優しく包み込み、私を強すぎる光から守ってくれる。枝の間から漏れる薄い光が心地よい。

 虫が必死に泣き叫ぶような声が聞こえて、鳥の羽ばたきや、植物の種を運ぶために包まれた甘い実を啄む音が響く。

 木々に守られ、鳥たちに身をもらい、私は自信たっぷりにずんずん進む。



 さらにどすどす歩いていくと、ひゅうひゅう風が襲いかかる。


 優しい木々たちの老人たちが優雅に舞い降り、新しい命の礎となる。

 それを知らない私は、蹴り飛ばして笑いながら歩く。

 他の動物たちは、チョロチョロと木の実を見つけては、家に隠す。

 その作業を見て、足りなくなったら貰えば良いんじゃないか、と思って、ずんずん進む。



 ずんずん歩いていくと、包み込んでくれていた木々は葉を無くし、それでもなんとか暖めようと、地面に自身を敷き詰めていた。


 それをかき集めて、なんとか暖かさを貰う。ご飯は、と見回しても返ってくるのは静寂のみ。 


 すんと冷えた空気は気持ちがいい。みんな気が引き締まっているかのようにピシッと立っている。

 寒い、寒い、と繰り返しながらも、木々の優しさに触れて、優しさを忘れないでいると、

また新緑の芽が出始め、続々と花が咲き乱れはじめた。


 一面希望に満ち溢れた道を見て、その先を見据える。


 そこで抱いた希望は、何色だったろう……



 大人になった私は、なんとなくその道をスタスタと小気味よく歩いてみていた。 


 過去との記憶と差異を見つけては、顔に出さずにはしゃぎ、1人だけの秘密をもらう。


 風が靡いて、帽子を揺さぶる。


 前より大きくなった木を見つめて、のんびりと、歩いてみる。


 すぐに歩き終わる。


 もう一周してみると、小さな白い花を見つけた。

 次は、赤い花。

 

 発見は無限大なんだ、と思って嬉しくなる。


 スキップをするようにして森の奥へ入っていくと、不思議な国へ着いた。

 

 子供時代への扉だ。開けると、自分の表情は見えなかったものの、喜びや悲しみなどの感情が溢れて止まなかった。


 あなたが望んだのは、何だったのでしょう?今が幸せなら、何よりです。そう包み込んでくれた。


 この先の移ろいの中、待ち受けるのはどんな人生なのか。


 その前に、のんびりと、もう一度振り返りませんか?

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自然と共に 碧海雨優(あおみふらう) @flowweak

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