新たなる「夜の町クラスター」爆誕

@HasumiChouji

新たなる「夜の町クラスター」爆誕

「ホントに役に立ってるんですかねぇ、これって?」

「あのなぁ、俺達は都の公務員なの。都知事の命令に従うしかないの」

「でも、一緒に来るお医者さんは公務員では……」

「うるせぇな。今日の分担決めるぞ」

「つか、残業代出るんですか?」

「後で、総務と労働組合にでも聞いて」

 例の伝染病の流行も一段落し非常事態宣言も解除された……筈なのに数字の上では、まだ流行は続いていた。

 そのせいで、俺達、都庁の職員は、夜の繁華街を見回る事になった。残業代が出るのなら、仕事が終るのが午前0時過ぎなので、深夜手当もついて、ちょっとした残業成金になれそうだが……そうもいかないようだ。

 その日も、定時後に会議室に一〇〇人ほどが集り、見回りルートの分担を決め、その他上からの通達事項が言い渡され、夜の7時か8時ごろに歌舞伎町・新橋・六本木・池袋・渋谷その他「夜の商売」が行なわれている地域の見回りに出掛ける事になった。俺達のチームの今日の見回りは歌舞伎町だ。


「え〜、今月は都の○○病要注意月間です。『三密』を避けて、夜の町でのお楽しみは、ほどほどにして下さぁ〜い」

 俺達はメガフォンで呼び掛け続けた。一応、ついて来てる医者は……病人より顔色が悪い。

「あの……センセ、どうしたんですか?」

「皆さんと似たようなモノですよ。終電で帰って、朝一で勤務先の病院に行く」

「ああ、そうですか……まぁ、いいや、そろそろ、例のパフォーマンスを……」

 若いのが、近くの通行人にハンディタイプの非接触型の検温機を向ける。

「はい、あの人は、平熱。次の人も平熱。次の人も……えっ? 38・5度?」

「おい、家で寝てた方がいい体温だろ。誰だ?」

 検温機を持ってた若いのは、ある人物に目を向けた。そして……1人の俺達のよく知っている男が手を上げる。

 そいつは通行人じゃなかった。

「てめぇ、馬鹿かっ? もし、お前が例の病気で、俺達にまで伝染うつったりしたら……」

「でも……例の病気の流行以降、仕事を休めるような雰囲気じゃなくて……」


 俺達のチームの一番若いヤツは、やっぱり例の病気に感染していて……そして、俺にも伝染うつしていやがった。

 より正確に言えば「見回り隊」の半数近くが感染者だと判明し、果たして、あいつが「見回り隊」最初の感染者なのかすら良く判らないらしい。

 ひょっとしたら、俺に伝染うつしたのも他のヤツかも知れない。

 更には「見回り隊」について来ていたお医者さんの中にも……まぁ、みんな、長時間残業続きで、体力が落ちてたようだ。

 これで、ちゃんちゃん、といけば良かったのだが……他の部署の人間が駆り出され、まだ「見回り隊」は続いているらしい。

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